2013 Fiscal Year Annual Research Report
シンプレクティック多様体上のハミルトン微分同相群のホーファー距離、カラビ擬準同型
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13J06631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川崎 盛通 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハミルトン微分同相群 / シンプレクティック微分同相群 / 非交差配置 / 共役不変ノルム / 交換子長 / 安定非有界性 / 擬準同型 |
Research Abstract |
・2次元トーラスの中の緯線と罫線の和集合がとても重い部分集合であることを示した。これを用いて、シンプレタティック微分同相写像で非交差配置不能な例を新たに構成した。2次元多様体という簡単な例でとても重い部分集合の例を新たに発見したことは興味深く意外性のある結果である。 手法であるが、ステムと呼ばれる初等的な議論を改良して上記の結果を得た。この手法はカラビ擬準同型の理論の中でも初期に整備されてから本質的な発展のほぼなかったものである。初等的とはいえ、ステムの議論の改良で新たな例が発見できたことはステムの新たな可能性を示唆する上でも重要と考えている。 ・ユークリッド空間のハミルトン微分同相群の交換子群上に安定非有界な共役不変ノルムを構成した。これにより、ブラゴ・イヴァノブ・ポルテロビッチの提出した問題「交換子長が安定有界な完全群上の任意の共役不変は安定有界となるか」に対し、否定的な解決を与えた。 手法であるが、交換子で書いた場合の各ハミルトン微分同相写像の台を一様に小さくしたような交換子長の変種が安定非有界な共役不変ノルムとなることを示した。筆者は問題の群上に安定非有界な前擬準同型と呼ばれるものを構成し、「安定非有界な擬準同型があれば交換子長も安定非有界となる」というよく知られた議論の一般化を用いて該当ノルムの安定非有界性を示した。 ユークリッド空間はいわば無限の広がりを持った空間であり、無限の広がりがハミルトン微分同相群の交換子長の安定有界性を導出するというのが従来知られていた。一方で、球体は有限の広がりを持つことから、安定非有界な擬準同型が存在し、ハミルトン微分同相群の交換子長も安定非有界となるのが知られていた。筆者の結果は後者の議論のアナロジーでユークリッド空間でも展開できることを示すものである。本手法は無限写像類群など無限の広がりを持つ他の群にも適用が期待される。また、上と同様な思想でホーファー距離の変種を研究することが大きな課題であると筆者は認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の共役不変ノルムに関する結果であるが、共役不変ノルムはホーファー距離の一般化であり、安定有界性が測地性と対応していることを考えれば、ホーファー距離の測地線問題についても貢献を果たしたといえる。 上記のとても重い部分集合に関する結果も、非交差配置の研究に明白に貢献するものである。 当初の計画とはずれも多いが、得られた成果そのものの大きさでいえば当初の計画以上の進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
非交差配置の研究でいえば、得られた成果そのものは計画以上であるものの、新たな理論の構築という方向性で大きな進展があったとはいえない。筆者の手法でとても重い部分集合の高次元での新たな例を探しつつ、得られた例への考察から新たな理論の構築への端緒としたい。 ホーファー距離での測地線の研究でいえば、得られた成果は純粋な幾何群論の未解決問題を解決するまでに強力であるものの、ホーファー距離そのものは扱っていない。ホーファー距離の変種を考える方向で、得られた成果の思想をホーファー距離の測地線問題と結びつけたい。
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Research Products
(2 results)