2013 Fiscal Year Annual Research Report
低強度運動が海馬可塑性を増強する分子機構の解明:海馬アンドロゲンの役割
Project/Area Number |
13J06649
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 正洋 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 低強度運動 / 海馬 / 神経新生 / 神経スパイン / ジヒドロテストステロン / アンドロゲン受容体 |
Research Abstract |
運動は海馬の可塑性を高め学習や記憶力を向上させる。この運動効果の作用機序解明は、運動が筋同様に脳の可塑性を高めることを裏付け、脳機能を高める運動処方開発などへの貢献が期待される。これまでに、ストレスを伴わない低強度運動は精巣由来ではなく海馬神経細胞のアンドロゲン合成を高め、その傍分泌もしくは自己分泌を介して神経新生を促進することを明らかにした。しかし、神経新生は海馬の歯状回特異的に生じており、その他の下位領域(CA1など)における低強度運動の効果やその分子機構は不明である。そこで本年度は、海馬の神経スパインに着目し、低強度運動が海馬神経スパインに及ぼす影響とアンドロゲン作用について検証した。実験では、Wistar系雄性ラットをアンドロゲン受容体の拮抗薬投与群(Flu群)と溶媒投与群(Veh群)にわけ、各群をさらに安静群、低強度運動群の2群にわけた。ラットには神経神経を高める2週間の低強度(13.5m/min)のトレッドミル走運動を課した。トレーニング終了後、脳を摘出、2海馬を含む脳スライス(400um)を作成し、顕微鏡下で蛍光色素(Lucifer Yellow)を神経細胞に注入することで神経スパインを同定した。解析には神経樹状突起の分岐、スパイン位置および複雑なスパイン形態を特定し、3次元の共焦点顕微画像から自動的に高速解析できるスパイン形態解析ソフトSpiso-3D用いて神経スパイン解析を行った。まだ解析途中であるが、ストレスを感じない低強度の運動でも十分に海馬の神経スパイン数は増加し、その効果はアンドロゲン受容体の拮抗薬(フルタミド)によって阻害される傾向を見いだしている。今後さらに実験を重ねることで、運動で高まる神経スパインにおけるアンドロゲンの役割が明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はこれまでに習得した海馬神経新生の解析技術に加え、スパイン形態解析ソフト 「Spiso-3D」用いた神経スパイン解析を行なった。まだ、検体数は多くはないが、概ね仮説(運動によるスパインの増加はアンドロゲンを介す)通りの結果を得ており、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまので研究成果より、低強度運動が海馬の可塑性(神経新生やスパイン)を高める分子機構としてアンドロゲンが主要な因子であることが明らかになった。アンドロゲン作用にっいてより詳細な検証を行うためには、受容体の拮抗薬投与ではなく、神経特異的にアンドロゲン受容体を欠損させた遺伝子改変動物が必要である。今後、アンドロゲン受容体のfloxマウスとCreマウスと交配させることでアンドロゲン受容体のコンディショナルノックアウトマウスを作成し、実験に供する予定である。
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Research Products
(2 results)