2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J06660
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久本 智之 名古屋大学, 大学院多元数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ベルグマン核 / 定スカラー曲率計量 / K安定性 / モンジュ・アンペール方程式 / ケーラー計量の空間 / テスト配位 / 測地線 / エネルギー汎関数 |
Research Abstract |
ベルグマン核の漸近解析やモンジュ・アンペール方程式の解析を定スカラー曲率ケーラー計量の問題に応用すべくいくつかの問題を設定していた。今年度は特に、K安定性の概念の見直しをテーマとして取り組んだ。定スカラー曲率ケーラー計量を持つ偏極多様体はK安定であることが知られているが、逆に定スカラー曲率ケーラー計量の存在を示すためには、より強い安定性の概念が必要であると考えられるようになった。私は特に、シェケリヒディ氏の提唱した一様K安定性の概念に注目した。K安定性は偏極多様体のテスト配位と呼ばれる変形族を任意に取ったとき、そのドナルドソン・二木不変量が正値であるという条件で定義される。一様K安定性のアイデアは、このドナルドソン・二木不変量の代わりにドナルドソン・二木不変量をテスト配位のノルムと呼ばれる代数的な不変量で割った比を考えるというものである。今年度雑誌に掲載された私の論文ではこのノルムがケーラー計量の空間で対応する測地線のノルムに等しいことを証明した。ここで用いられた次数付き線形系のアイデアを用いて、K安定ならば一様K安定であることが証明できた。現在の課題を述べると、まず一様K安定な多様体の具体例が不足している。シェケリヒディ氏はトーリック曲面で一様K安定な例を与えているが、私は今年度一般の曲線や曲面に対し一様K安定が成り立っ条件を考察した。その結果、代数的・解析的なアプローチ双方からいくつかのクラスで一様K安定性が成り立つことを確認できた。また、多様体がゼロでない正則ベクトル場を持っ場合は、一様K安定性は適切な概念とならない。そのような場合に該当する安定性の概念についても考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一様K安定性がどのような偏極多様体で成り立っているか検証し、正則ベクトル場が消えていない場合にも一様K安定性の概念をどのように修正すべきか考察した。このような進歩があったが、今年度中に論文としてまとめることができなかったため、やや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
主にファノ多様体を対象として一様K安定性について調べてきたが、この研究を足がかりにしてさらに一般の偏極多様体について考察を広げていきたい。また、逆に一様K安定性から、ケーラー計量の空間の上で定義さえたエネルギー汎関数の性質(propernessやlower-boundedness)が導けないか考察したい。また、ファノ多様体の場合にネーデルの乗数イデアル層とK安定性(一様K安定性)の関係を明らかにしていきたい。
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Research Products
(8 results)