2013 Fiscal Year Annual Research Report
同一染色体上に存在するSNPおよびエピジェネティック修飾の推定法の開発と機能解析
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13J06670
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 拡高 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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Keywords | ハプロタイプ / ハプロタイプアセンブリ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、ハプロタイプ推定に用いられるシークエンシング方法(dilution-based sequencing)のデータに含まれるキメラフラグメントの検出に関する研究の論文の取りまとめを行った。キメラフラグメントとは、dilution-based sequencingにおいてゲノム断片を低濃度で複数サンプルに分割する際、異なるハプロタイプから同一ゲノム領域由来の断片が同一サンプルに含まれた場合、ハプロタイプの由来が異なるシークエンスリードが一つのフラグメントに統合され、結果として本来のハプロタイプがキメラ状になったフラグメントのことである。我々は2013年に発表した論文で、キメラフラグメントがハプロタイプ推定において精度を大きく下げる要因であることを示した。そこでそのようなキメラフラグメントが実験的なエラーから形成されるもので、生物学的に存在するハプロタイプとは異なることに着目し、生物学的なハプロタイプとの違いを定量化する指標を構築、計算した。我々の手法を実データに適応した結果、キメラフラグメントを高い感度で検出することに成功し、検出されたフラグメントを除去したのちハプロタイプを推定することで精度が向上したことを示した。本研究は” Integrating dilution-based sequencing and population genotypes for single individual haplotyping.”というタイトルでBMC Genomicsに平成26年度に受理され、出版されるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究から、ハプロタプアセンブリに用いるシークエンシングデータ中に含まれるエラーが、ハプロタイプアセンブルにおいて精度を大きく下げる要因となることを突き止めていた。そのようなエラーを取り除くため、エラーによって生成されるフラグメントが生物学的なハプロタイプとは異なると考えられることを指標に、その程度を定量化するアルゴリズムを開発した。さらに開発したアルゴリズムを実データに適用した結果、エラー候補を除去することでハプロタイプアセンブリの精度が大きく向上したことを示した。以上の結果をとりまとめ論文化しBMC Genomicsに投稿し、リバイスにてレビュワーに指摘された点に関し追加実験をしたのち、アクセプトされ出版された。以上のことから、ハプロタイプアセンブリの精度向上のための手法の開発に成功しかつその有用性が認められたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までハプロタイプアセンブリおよび、ハプロタイプアセンブリに用いられるデータ中に含まれるエラーの除去に関し研究を行い、新規手法を開発し論文を発表した。以上より、ゲノム情報の染色体レベルでの分離に関するアルゴリズムの開発は一通り完成したと考え、次に細胞間の関係や、時系列の関係の理解に向けた手法の開発と解析に移ることを予定している。具体的には、近年1細胞解像度で遺伝子発現量を網羅的に観測可能にした1細胞RNA-Seqの時系列データの解析に向けた手法を作成する。特に、細胞分化などの細胞状態が同一の初期状態から複数の細胞状態への変化を起こす系において、その細胞運命がどのように決定されているかなどの解析のためのアルゴリズムを研究する。 ここで細胞状態が遺伝子発現量から規定され、細胞状態の遷移とは発現量のダイナミクスを解析することで理解できると仮定する。すると、必要なのは発現量の時間変化をモデル化することである。そこで私は、確率過程の一種であるOrnstein-Uhlenbeck過程を用い発現量ダイナミクスをモデル化できないかと考えており、本手法の発現量への適用を検証するとともに、細胞分化などに適用させるための手法を確立する。また、手法が完成次第、細胞分化のみでなく脱分化やがん化なでへも応用し、その機構を解き明かすことも目指す。
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Research Products
(2 results)