2014 Fiscal Year Annual Research Report
反強磁性的な量子揺らぎを用いた量子アニーリングの研究
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13J06788
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
関 優也 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子アニーリング / 量子計算 / 量子相転移 / 量子多体局在現象 / 計算複雑性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
・研究成果 ランダムネスを含む模型における量子アニーリングを困難にする原因に関する研究を開始した.原因として考えられているのは今の所,量子多体局在現象とエントロピー効果による相転移現象である.量子多体局在現象に関しては,系の準位間分布の観点から研究を進めている.エントロピー効果による相転移現象に関しては,量子揺らぎの選び方によって相転移の性質が変わることを見つけた.また,量子揺らぎを導入する演算子の基底状態の縮退数と量子アニーリングの効率の関係についても調べ,巨視的な縮退があるだけでは量子アニーリングの効率を改善するのには不十分であることが分かった.
・意義と重要性 イジングスピン系の基底状態探索を効率的に行う手法の開発は社会に対し大きな貢献をする.これは,基底状態探索が組み合わせ最適化問題を解くことに対応しているからである.組み合わせ最適化問題の例としては,物流の配送ルートの最短化などがあげられる.この研究が発展すれば,これまで膨大な計算時間がかかっていた最適化問題が短い計算時間で解けるようになることが期待される.量子アニーリングは量子効果を利用することで組み合わせ最適化問題を効率的に解くことができると期待されている手法である.横磁場というものを用いて問題を解く方法が量子アニーリングの一般的な方法であるが,この場合膨大な計算時間が必要になる例が見つかっている.困難を引き起こす原因はいくつか挙げられており,その中の二つが量子多体局在現象とエントロピー効果による相転移現象である.幸いなことに,量子アニーリングは横磁場以外を用いることができるという任意性を持っており,この任意性を用いることで上で述べた問題が回避できる可能性がる.よって,この任意性につて調べる意義がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ランダムネスを含む系の量子アニーリングを困難にしていると考えられている量子多体局在現象についての研究に取り掛かり,この現象が起きる系の解析方法を取得した.また,エントロピー効果による量子相転移現象が,量子アニーリングの任意性を利用することで変化する模型を見つけることができた.この模型に対して,量子揺らぎを導入する演算子の基底状態の縮退数が量子アニーリングの効率に与える影響を調べ,その結果巨視的な縮退度だけでは量子アニーリングの効率を改善するためには不十分であるということが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
量子多体局在現象に関しては,現在の所,横磁場を用いた例のみの解析を行っている.そこで,横磁場以外の演算子がこの現象に与える影響についての解析を進めていく.また,エントロピー効果による量子相転移を起こす別の模型に対しても,量子揺らぎの任意性を利用して,今回のように量子相転移の性質を変化させられるかを調べる. ランダムネスを含む系の解析において,横磁場以外の演算子で量子性を導入した場合,量子モンテカルロ法や量子キャビティ法の適用が困難であることが分かった.そこで,このような系の解析は少数スピン系に限定し,ハミルトニアンの対角化やシュレディンガー方程式による時間発展の数値シミュレーションを用いることにする.
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Research Products
(2 results)