2013 Fiscal Year Annual Research Report
歯の再生を目指した新規小分子化合物による歯原性上皮細胞分化誘導法の開発
Project/Area Number |
13J06802
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
成瀬 正啓 東北大学, 大学院歯学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細胞分化 / 歯の発生 / 小分子化合物 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
近年、幹細胞を用いた組織再生法の臨床応用が現実的となり、歯科領域においても、歯の再生技術の開発が注目されている。本研究は、歯の再生の実現化に向け、臨床応用可能なヘッジホッグ(Hh)シグナル作動小分子化合物を用いた歯原性細胞制御技術開発を目的とする。 エナメルは生体で最も堅く、歯の機能に必須の硬組織である。エナメル形成には歯原性上皮細胞から分化したエナメル芽細胞が必須であるが、完成した歯にはエナメル芽細胞は存在しない。しかし、智歯は思春期頃に完成する為、歯冠完成前に抜去する事で歯原性上皮細胞を調達できる。我々は、将来歯の再生に必要な歯原性上皮細胞を効率的に増殖させ、さらにエナメル芽細胞へ分化誘導させる研究を計画した。本研究は歯の発生に重要な分子であるSHHに着目して解析を行った。歯原性上皮細胞株に、Hh作動小分子化合物を刺激し、遺伝子発現変化を指標とし、エナメル芽細胞分化誘導能を検討すると、エナメル芽細胞分化マーカー遺伝子の発現亢進を確認した。次に、生体に近い条件でのエナメル芽細胞分化能を評価する為、マウス胎仔の歯胚を用いた器官培養系を利用した。同小分子化合物を器官培養液に添加すると、歯胚においてもエナメル芽細胞分化マーカー遺伝子の発現が亢進した。以上の結果より、我々が用いた小分子化合物は歯原性細胞に対してエナメル芽細胞分化誘導能を有することが明らかとなった。さらに小分子化合物がエナメル芽細胞分化を誘導する分子機構を解明する為、シグナル活性化の探索を行ったところ、ERK1/2の活性化を引き起こした。 今後、本小分子化合物の詳細な分子機構を解明し、歯の再生の基盤研究として発展させていきたい。本研究で得られる知見は発生段階でSHHが重要な役割を演じる他の器官(毛根、味蕾、神経、唾液腺、乳腺、腎臓、肺等)の再生にも応用可能であり、歯を含めた再生医療技術の開発に繋がることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯原性上皮細胞株を用い、小分子化合物が遺伝子発現に与える変化の解析に関して、至適濃度、作用時間、細胞状態の検索に時間がかかった。また、マウス胎仔より安定した歯胚採取、器官培養技術の獲得により、器官培養系を利用し、小分子化合物が培養歯胚に与える遺伝子発現変化の解析が進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
小分子化合物の歯原性上皮細胞増殖・分化の分子機構の解明に向けて、Wnt、Bmp、MAPKシグナル伝達経路に注目しWestern blotting法を用いて解析を行う。また、マウス歯胚器官培養系を用いて、小分子化合物が歯胚形成において、形態、歯冠の大きさ、分化速度に与える影響について、遺伝子発現や形態変化をモニターし解析を進める。また、小分子化合物存在下で培養されたマウス歯胚の組織切片を作製し、HE染色にて組織学的な検討を行うと共に分化、増殖マーカータンパク、シグナル伝達分子群に対する抗体を用いた免疫組織染色を行う。
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Research Products
(3 results)