2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J06859
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石津 智大 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員PD
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Keywords | 視覚 / 潜在的情報処理 / 脳磁図 |
Research Abstract |
(1)非随意的な知覚変化の誘導 ヒト視覚における潜在的・顕在的処理の仕組みを認知神経科学的に解明することが本研究課題の目的である。本年度では、非随意的に知覚が変化する現象を用いて、潜在的な情報処理に関連する脳領域の同定を目標とした。無意味な図形を観察しているとき、その図形に関して付加情報が与えられると、図形の知覚が非随意的に変化する現象が知られ、「文脈効果」と呼ばれる。この文脈効果を利用して、刺激図形が、無意味であると知覚される条件と、(同じ刺激が)付加情報に沿った新しい意味を持つように知覚される条件とを、心理物理学実験的に作り出した。具体的には、無意味なインクのしみのような白黒画像群を用い、条件①では「75%の確率で身体像が提示される」と、一方、条件②では「25%の確率で身体像が提示される」と教示を行った。結果、同一の刺激群を用いたにも関わらず、条件①において、身体像知覚の報告が有意に高かった。これらの実験刺激・手続きを用いて、知覚が非随意的に変化した場合の脳活動を脳磁図を用いて検計した。 (2)脳磁図を用いた非随意的知覚変化の脳活動に関する検討 (1)で確立した実験刺激・手続きを用い、非随意的知覚変化の脳活動を調べた。ロンドン大学の脳磁図を用いて取得した脳活動データをもとに、知覚変化が生じる際に特異的に活動する脳領域について解析を行った。結果、言語的な意味処理や視覚的イメージ生成に関係すると考えられる下前頭回の活動が高まることが明らかになった。さらに、脳活動の時間的解析を行った結果、この下前頭回の活動は、視覚情報を処理する視覚領域の活動に先行して生じることが明らかになった。以上の結果から、文脈効果により視知覚が変化する際は、下前頭回から視覚領域へのトップダウンの情報処理が行われている可能性を明らかにした。この研究成果の一部は国際学術誌に原著論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画された脳機能実験およびデータの解析が平成25年度中に終了しており、研究成果が原著論文として国際学会誌に掲載されたことから、当初の予定より速く研究目標が達成できている。研究委託先である英国ロンドン大学では、研究計画発表を既に行い、また他の研究者と協力して行動実験と脳機能実験を行っており、平成26年度の機能的MRIを用いた実験にもスムーズに取り掛かれることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に行った非随意的な知覚変化の脳磁図実験のデータに関して、dynamic causal modelingと呼ばれる脳活動の伝播を調べる解析法を用い、その活動遷移を検討する。それと同時に、機能的MRIを用いて類似の実験を行い、脳磁図と機能的MRIとのデータを統合することで、潜在的情報処理の神経基盤に関して詳細な検討を行う。さらに平成26年度では、より複雑な実験刺激(顔、風景など)を用いて実験を行うことにより、非随意的な知覚変化の脳内機構が、刺激の複雑さによって変化するか検討を行う。
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Research Products
(6 results)