2014 Fiscal Year Annual Research Report
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13J06869
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西井 奨 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文芸学 / 弁論術 / 詩学 / 古代ローマ / ホラティウス / オウィディウス / ラテン文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代ローマの文芸における理論面(弁論術・詩学)を対象とするものと、その理論面を踏まえたうえで実作たる作品を対象とするものである。本年度は、以下のように研究を進めることができた。 (1)古代ローマの文芸における理論面(弁論術・詩学)での研究 ホラティウス『詩論』について、アリストテレス『詩学』との綿密な比較から研究を進めた。この際、ルネサンス期における両作品の受容と、その受容によりなされている解釈の問題を明らかにし、改めて『詩論』本文のより良い解釈を模索するという手法をとった。また1548年に出版され後代の解釈に大きな影響を与えているロボルテッロによる両作品の注釈も検討した。また、これと関連して、『詩論』338行目 ficta uoluptatis causa sint proxima ueris「喜ばせるためにつくられたものは、できるだけ真実に近いものでなければならない」という一節についてさらなる検討をしているところである。ここでは、美学におけるvraisemblance「本当らしさ」の概念と関連して、このホラティウスの一節の美学史上での位置づけを再検討している。 (2)古代ローマの文芸の実作たる作品研究 上述の理論面での研究と並行して、古代ローマの文芸の対象として中心的であるギリシア神話を題材とした作品研究も進めた。これまでの研究に引き続きオウィディウス『名高き女たちの手紙』を対象とし、とくに各手紙の冒頭の表現の問題について検討した。この各手紙の冒頭にはしばしば後代のinterpolationが確認されるが、それは本来の冒頭の表現がある種の「唐突さ」を有しているためである。そこでこの「唐突さ」は背景となる神話と関連してどのように解釈するべきかということを、特に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次文献の精読、研究書の精読、そしてそれに基づいた研究発表を、定期的なペースでこなすことができた。 特にホラティウス『詩論』について、確かな手応えを得られる形で研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
特に美学の分野で、自分の研究を発展させていく。
(1)海外の学会で英語による発表をし、自らの研究に対してより広く意見を得ていく。 (2)海外の学術雑誌に、英語による論文投稿をする。 今後はこれら(1)(2)を積極的に行っていく。
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Research Products
(3 results)