2014 Fiscal Year Annual Research Report
アンリ・プーラ『丸い丘の上で』の文献学的・言語地理学的語彙研究
Project/Area Number |
13J06875
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
椎根 里菜 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アンリ・プーラ / ジャン・ロラーニュ / フランス地方語 / オーヴェルニュ / 批評校訂版 / 語彙研究 / 草稿研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用二年目は、一年目から継続しているアンリ・プーラとジャン・ロラーニュ共同執筆の『丸い丘の上で』の批評校訂版ならびに語彙集の作成作業を進めた。アンリ・プーラ生前に出版された6版に加えて草稿にも目を通し、オーヴェルニュ版とパリ版に分けて行うテクストの打ち込みと、異同の比較検討を行って脚注に記す土台作成作業は、分量の多さから一年では終えることができなかったが、二年目ではこの作業を完成させることができ、さらにはテクスト内のフランス地方語の語彙研究にも着手し、語彙集の作成も進めている。これまで研究対象となってこなかった『丸い丘の上で』を全版比較検討した批評校訂版は、作者の作品作りにおける加筆・修正の多さを明らかにすることになり、今後の文学研究者の礎ともなるだろう。アンリ・プーラはそのフランス地方語の用法においても、非常に興味深い研究対象であるが、今まで研究されてこなかったゆえに、その膨大な情報が辞書に活かされず眠ったままでいる。『丸い丘の上で』の語彙研究を行うことで、既存の辞書に情報を補完できる用例は既にいくつも見つかっており、辞書に記載されていない語彙も見つかっているため、作品全体の語彙集を完成させることによって、語彙研究の面においても大いに貢献できるだろう。 また、採用二年目はフランスの学術研究団体であるアンリ・プーラ友の会のメンバーと情報交換をし、自身の執筆した学術論文を読んでもらう機会を得ることができた。その結果、2015年に出版されるアンリ・プーラ友の会の会報に論文を掲載できることとなり、フランス本土でアンリ・プーラ研究者として広く認知される機会となろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採用二年目は、一年目に行っていたアンリ・プーラとジャン・ロラーニュ共同執筆の『丸い丘の上で』の批評校訂版のための土台作りとしてのテクスト打ち込み作業の継続、ならびに6版と草稿の比較による異同の確認を主に行った。この基本作業は分量が多く、一年目で終えることができなかったが、二年目ではこの作業を完了させることができ、これで批評校訂版の土台はほぼ完成したといえる状態にまで進めることが出来た。また、基本作業のみならず、テクスト内のフランス地方語の語彙研究にも着手し、語彙集の作成を始めており、読者にとって作品が理解しやすくなるよう脚注をまとめる作業も開始した。現時点でも既に既存の辞書に補完できる用例や、記載のない語彙の発見があり、語彙研究の面においても貢献できる研究内容となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
三年目の研究の推進方策としては、現在行っている『丸い丘の上で』のフランス地方語の語彙研究を語彙集としてまとめ、本文の脚注の編集作業を進める。『丸い丘の上で』という作品は、現代のフランス人でも容易に想像できない、一昔前の農村独自の文化や慣習が描かれているため、適宜民俗学文献などにもあたりつつ情報を補足したり、細やかな説明が必要となるであろう。必要であれば、オーヴェルニュ地方におもむき、フィールドワークを行うことも考えている。他には、序文執筆にあたりアンリ・プーラが作品執筆に引用した文章やエピグラフを調査してまとめる。また、6版の詳細な情報の紹介を通して相違点を明らかにし、ジャン・ロラーニュの弟であるフランソワ・アンジェリの挿絵も紹介し、版による違いにも触れる。作品の成立経緯についても調査してまとめていく考えである。
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Research Products
(2 results)