2013 Fiscal Year Annual Research Report
環境中放射性ストロンチウムの迅速定量法の開発と環境影響評価への適用
Project/Area Number |
13J06895
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 志彦 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 放射性ストロンチウム / 迅速定量 / 加速器質量分析 / 環境影響評価 / 福島第一原発事故 / ICP-MS |
Research Abstract |
本年は高精度かつ迅速な環境中放射性ストロンチウムの分析法を確立させるため、測定手法の基礎情報取得を中心に行った。 具体的には(1)Sr負分子イオンビームの試験、(2)荷電粒子の挙動確認、(3)前処理法の見直し、(4)ICP-MS適用の評価、(5)環境影響評価のための試料採取、を行った。 以下、詳細に記す。 (1)ストロンチウムは2族元素のため、加速器質量分析法で必要な負イオンビームを直接取り出すのは困難である。そのため負分子イオンビームとして取り出す必要がある。本研究課題ではストロンチウムの化学形を大気中でも取り扱いしやすいSrF_2とし、マトリックスにPbF_2を採用することで、0.5μAのSrF_3^-ビームを得ることに成功した。この値は加速器質量分析に用いるに十分なビーム量である。(2)は測定時に妨害となる^90Zrを^90Srのビームに見立て検出器に導入した。得られた^90Zr/^88Sr比は10^-8であり、予想される値に一致した。(3)は質量分析に特化した処理法として、従来の壊変計測と異なり、質量分析は同位体比の計測で定量が可能なため、Srを選択的に保持する樹脂を使用して、土壌から化学収率よりも処理時間短縮に特化した試料処理法を完成させた. (4)について、前年度に機関に従来品よりさらに優れた性能を有するICP-MSが導入された. それに合わせ、当初のプラスチックシンチレーター法に加え、スクリーニングの高度化のため、ICP-MS法適用のための基礎評価を行った. (5)について、福島県内で土壌や河川水等の環境試料の採取を行い、本研究課題による手法を適用するための試料を準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究開発目標は分析方法確立のための基礎情報収集であった。それに基づき、加速器を用いた実験や、対象物の分離操作を行う過程の確認を行った。具体的には、(1)加速器実験で大電流Sr負イオンビームの取り出し、と検出器内での挙動の確認、(2)新規測定法に合った分離方法の簡略化の基本的な流れ、について完了した。また環境試料由来の標準試料準備に着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で新規分析法における準備を整えることができた。しかし一方で基礎情報はまだ十分とは言えず、実用化に向けてさらなるデータの収集が必要になると考えられる。平成26度は筑波大学で新型タンデム加速器が運転を開始するため、本格的な軸用かに向けた基礎実験を行う。またストロンチウムの絶対測定に不可欠な標準試料の準備を進めていく。さらに高濃度試料のスクリーニングを目的とした測定手法としては、プラスチックシンチレーター法に加え、コリジョンリアクションセルを装備したICP-MSを用いた手法の開発も進めてゆく。
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Research Products
(9 results)