2013 Fiscal Year Annual Research Report
シミュレーションおよび選抜試験に基づく植物育種におけるゲノミックセレクション
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13J06921
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢部 志央理 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ゲノミックセレクション / 普通ソバ / 植物育種 / シミュレーション |
Research Abstract |
これまでにシミュレーションで示した「他殖性植物におけるゲノミックセレクション(GS)の有効な育種デザイン」に基づき、普通ソバにおいてGSの実証試験を行った。また、平成24年度までの2年間のGSの成果を、比較栽培試験により検証し、①従来の表現型選抜(PS)とGSの比較、②シミュレーションとの比較から、他殖性植物の育種におけるGSの有効性を示すとともに、GS育種を行う上での条件などを示した。 これにより、個体サイズや世代時間の長さ故にGSの有効性検証が困難であった他の他殖性植物に対し、GSを用いて効率的な育種を実現できる可能性が示唆された。GSの実証試験結果を国内学会において発表し、また、用いたマーカージェノタイピングシステムについて、普通ソバの高密度連鎖地図とQTL解析の論文を投稿している。これにより、多くの研究者がGSの手法や効果、GSに不可欠な高速ジェノタイピングについての知見を得られるようになったと考えられる。また、GSの初期世代のデータを用いて解析を行うことで、GSの予測モデルの抱える問題点を示し、国際学会で発表した。このことにより、GSを長期間行う際の留意点などを示すことができたと考えられる。さらに、「GSによる選抜を行う際の適切な育種デザイン」として、これまでの個体数や世代数ベースで最適デザインを考案するだけでなく、選抜や交配の手法そのものについて、新しい方法を提案し、シミュレーションでその有効性を検証し、国内学会において成果を発表した。この方法は、一般的な循環型のGSの適用が難しいとされる自殖性植物にも適用可能であり、GSの効率的な利用をさらに発展させる足がかりとなったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノミックセレクション(GS)の実証試験は計画通りに行われ、また、平成24年度までの2年間の選抜の成果を比較栽培試験によって評価し、シミュレーションの結果と比較した。これにより、GSが植物育種に有効であることを実証試験の結果に基づいて示した。また、GSの有効な育種デザインの提案の発展として、他殖性植物のみではなく自殖性植物でも対応した育種デザインを提案し、シミュレーションを用いてその有効性を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの3年間の普通ソバにおけるゲノミックセレクション(GS)の実証試験の結果について、比較栽培試験を行い、その結果を評価し、発表する。また、これまでのGSの結果につて、表現型ベースのみでなく、マーカー遺伝子型ベースの詳細な解析を行うことで、従来の表現型選抜とGSの選抜方式の詳細な比較を行うとともに、GSによる選抜経過の詳細についての知見を得る。これまでの実証試験において、選抜の繰り返しとともに近親交配とそれに伴う集団の遺伝的多様性の枯渇が問題として浮上した。これに関して、他殖性植物を用いた大規模なGS育種を行っている研究者と連携し、その解決策となり得る手法や知見を考察し、シミュレーションや実証紙面に基づいて検証する。
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Research Products
(4 results)