2013 Fiscal Year Annual Research Report
価数制御と格子欠陥由来の自己組織化による特異な酸化物表界面の構築と新物質創製
Project/Area Number |
13J06933
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山内 涼輔 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ステップサファイア / NiO / LiNiO / パルスレーザー堆積法 / 急速熱処理 / 回折格子 / LiNiO2 |
Research Abstract |
鏡面研磨されたサファイアC面基板を1000℃で熱処理すると、その表面には高さ0.2nmのステップ&テラス構造が形成される。そのサファイアのステップ&テラス構造上にパルスレーザー堆積法によってLiNiO薄膜を堆積後、赤外集光加熱で瞬間的に(60秒)1200℃で熱処理することによって、深さ60nmの回折格子構造が自己組織化的に形成される。この自己組織化現象では、Nio薄膜よりもLiNiO薄膜の方が回折格子の溝は深くなることがわかっているが、熱処理後にLiが膜内にどのように分布しているかはわかっていなかった。そこで、透過型電子顕微鏡によって、光学材料として重要な材料の均質性を評価した。その結果、Liは熱処理後に膜中で一部凝集したり、サファイア基板と反応層を作ったりしていることが観察された。 また、この回折格子構造の自己組織化では、LiNiO薄膜の一部がLiNiO2へ構造相転移していることがわかっている。赤外集光加熱等の熱力学的非平衡プロセスによってLiの蒸発を抑制しながら構造相転移させ、LiNiO2の単相化を目指した。赤外集光加熱時にサンプル同士を向かい合せたり、赤外集光加熱の保持時間・保持温度の調節を試みたりすることでLiの蒸発を大きく抑制できたが、LiNio2の単相化は実現しなかった。そこで、これまで大気中で行っていた赤外集光加熱を酸素気流中で試みた。その結果、LiNiO2の単相化の兆候がX線回折測定から得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サファイアのステップ&テラス構造で誘起された面欠陥由来の回折格子構造を光学材料として利用できるか検討するために当初の計画通り、透過型電子顕微鏡を利用して回折格子の断面構造を観察することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
この自己組織化現象における溝は、立方晶LiNiOがステップサファイア上に双晶成長することによって発生した面欠陥を熱処理で拡散させることで形成されると推察される。このことを明らかにするため、溝で区切られたNiOの結晶方位が隣同士で180。回転していることを制限視野電子回折法で観察し、サファイアC面基板上の特異な結晶成長機構を明らかにする。
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