2013 Fiscal Year Annual Research Report
アクセントの平板化現象から見た日本語の韻律的特性の解明
Project/Area Number |
13J07011
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
儀利古 幹雄 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 時空間変異研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | アクセント / 平板化 / 言語内的要因 / 言語外的要因 / 平板型アクセント |
Research Abstract |
平成25年度はまず、外来語複合名詞アクセントの平板化に関する発話調査を、20-60歳の東京方言話者に対して実施した。その結果、話者の年齢が下れば平板型アクセントで発話される頻度が高くなることが観察された。しかし、話者の年齢が低くなればどのような語であっても平板化が進行するわけではなく、語末の特殊拍が長音である場合はいかに発話者の年齢が低くてもアクセントの平板化は観察されないという、言語内的要因(言語構造的要因)の関与も明らかとなった(語末の特殊拍が撥音である場合には比較的平板化が進行していた)。 次に、次に、漢語複合名詞アクセント(例 : 山田町、懇親会、学園祭)の平板化に関する調査も実施した。その結果、外来語複合名詞の場合と同様、話者の世代が下るほど平板型アクセントの生起頻度は上昇するというアクセントの平板化が観察された。そしてその程度は、外来語複合名詞の場合よりも著しいことも観察された。ただ、これらの複合名詞の平板化は、前部要素の音韻構造から極めて強く影響を受けており、前部要素が特定の音韻構造である場合にのみアクセントの平板化は進行していた。即ち、漢語複合名詞アクセントの平板化には、言語外的要因以外に、言語内的要因が強く影響するということが明らかになった。 また、アクセントの平板化は様々な方言において様々な形で現れる。そこで、鳥取県倉吉方言の名前のアクセントの変化に関する調査も実施した。これは、平成27年度に実施する予定である和語名詞の平板化に関する研究に関係する。調査対象としたのは、3モーラでかつ軽音節の連続である名前である(例 : 恵美子、幹雄、和也など)。発話調査を行った結果、話者の世代が下るにつれて、伝統的な中高型アクセントの生起頻度は低下していき、平板型アクセントの生起頻度が上昇するということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漢語複合名詞アクセントの平板化に関する調査は、平成26年度から実施する予定であったが、25年度中に着手できた。これは計画よりも研究が進展していることを示している。しかし一方で、調査に重きを置いたため、学会発表や論文執筆などが満足にできなかった。この2点を総合的に考えて、現段階では研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も昨年度と同様発話調査は進めていきたい。具体的には、東京方言以外の方言でのアクセントの平板化を調査し、地理的要因も含めてこの現象をより包括的に分析していきたい。データの統計的分析が進んでいないことが問題点としてあげられるが、これは早い段階で統計ソフトを購入し、データを分析することで解決できる。
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Research Products
(1 results)