2013 Fiscal Year Annual Research Report
人工光合成を目指したタンパク質設計とその色素複合体の電極基板上への組織化
Project/Area Number |
13J07029
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
酒井 俊亮 名古屋工業大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光合成 / タンパク質 / 色素 / 電極基板 / 再構成 |
Research Abstract |
本研究は光合成初期過程におけるエネルギー変換システムを模倣した、高効率な人工光合成デバイスの開発を目的としている。本研究で用いた光合成細菌の光合成膜中には光エネルギーを捕集する諸種の膜タンパク質/色素複合体が存在している。これらの複合体に含まれる色素分子は膜タンパク質によって距離や配向が制御されており、光合成初期過程でのエネルギー捕集を高効率に行うために最適化された構造であると考えられる。従って、これらのタンパク質/色素複合体の構造を人工的に再現することができれば、前述のような人工光合成デバイス開発のための礎となる事が期待できる。 そこで、本研究ではタンパク質/色素複合体を構築するためのビルディングブロックとして、紅色光合成細菌の光捕集アンテナ(LH1複合体)を構成する膜タンパク質(LH1-α)をモチーフとした組み換えタンパク質、MBP-rubα-YHを遺伝子工学的手法により作製した。MBP-rubα-YHは天然のLH1-αと同様に色素との複合体を形成でき、天然の複合体と同様にタンパク質によって色素の会合状態を制御できることが示された。また、調製したMBP-rubα-YHと色素の複合体を、既報に従いAu電極基板上に固定化することができた。この電極に色素の吸収波長の光照射を行い、電子受容体としてメチルビオロゲンを用いることでカソード方向への光電流応答を観測することができた。この結果から、MBP-rubα-YHと色素の複合体は光合成反応中心のように一方向への電子移動を行う機能を持った素子としての利用が期待でき、アンテナとしての機能を持った他のタンパク質/色素複合体や電子伝達系タンパク質などと組み合わせることで、当初の目的である天然の光合成の機能を模倣した人工光合成デバイスの開発へと繋がるであろうと言える。本研究の成果は、投稿論文1編(Langmuir, 2013, 29 (17), pp5104-5109)、及びポスター発表2件、口頭発表2件で報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は天然を模倣した人工光合成系の構築を目指し、設計タンパク質と色素からなる複合体の電極基板上への固定化に取り組んだ。設計タンパク質は天然の光合成タンパク質と同様に色素との複合体を形成することができ、さらに電極基板上に変性することなく固定化することができた。また、光照射により、光合成反応中心に類似したカソード方向への光電流応答を観測することができた。 本年度は投稿論文1編(Langmuir, 2013, 29 (17), pp 5104-5109)、及びポスター発表2件、口頭発表2件で報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、光捕集アンテナおよび光合成反応中心と類似した機能を持つタンパク質/色素複合体を人工的に構築することができた。これらに電子伝達系タンパク質を組み合わせることで天然の光合成を模倣した人工光合成系、すなわち光捕集・エネルギー変換・電子伝達の一連の流れを構築することができる。したがって、今後の研究方策は、組み換え電子伝達系タンパク質の作成及びタンパク質1色素複合体と共に電極基板上に固定化することである。
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Research Products
(5 results)