2013 Fiscal Year Annual Research Report
恒星の高分散分光観測にもとづく銀河系化学力学進化の解明
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13J07047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石垣 美歩 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 銀河系ハロー / 金属欠乏星 / 化学元素組成 / 矮小衛星銀河 / 超新星爆発 / 元素合成 / 初代星 / 高分散分光観測 |
Research Abstract |
本研究課題は、銀河系が宇宙初期からどのような物理過程を経て現在の姿になったのか、そして銀河系物質のもととなる元素はどのような天体現象を通してつくられてきたのかを金属欠乏星(ヘリウムより重い元素の組成が太陽のものより低い星々)の化学元素組成の観測から解明することを目指している。金属欠乏星の化学組成から銀河系化学力学進化を解明する研究の一環として、本年度はおもに以下の2つの課題に主に取り組んだ。 1)Bootes I矮小衛星銀河の化学元素組成解析 : 銀河系の周りを軌道運動する矮小衛星銀河は、主に金属欠乏星から成り立っており、年齢が古いことで知られている。Bootes Iは星の年齢が宇宙年齢と同程度と特に古く、宇宙で最初にできた銀河のひとつである可能性が指摘されている。従って星々の元素組成を調べれば、宇宙で最初に作られた星々(初代星)による超新星爆発元素合成についての制限が得られることが期待される。本研究ではBootes I矮小銀河に所属する6つの星について、すばる望遠鏡高分散分光器(HDS)で取得された分光データを解析し、主要な元素の組成解析を行った。解析の結果、この銀河では多くのα元素および鉄ピーク元素において、鉄に対する組成(X/Fe)が一様であることが分かった。いっぽうで中性子捕獲元素については、銀河系とは異なる傾向が明らかになった 2)金属欠乏星の化学元素組成と初代星超新星爆発元素合成モデルとの比較 : 金属欠乏星の化学組成を解釈するうえで、それぞれの元素がどのような天体で作られているかを理解する必要がある。本研究では、銀河系ハローでいくつか見つかってきているα元素と鉄の組成比(α/Fe)の低い星々、さらに最近発見された鉄の組成がこれまでに見つかった中でもっとも低い星について、初代星の超新星爆発元素合成モデルとの比較を行った。その結果、なかでも炭素過剰な星々の組成は、超新星爆発放出物の混合と中心核への降着の結果として解釈できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の1)は以前に所属していた研究機関で行っていた研究からの継続課題であるが、本研究課題と合致するテーマであり、本年度に観測結果のより詳細な考察を含めて論文まとめ、出版することができた。2)については結果をすでに1本の論文にまとめ、さらにもう1本の論文を仕上げつつある。また超新星爆発メカニズムに観測的な制限を得る目的て、金属欠乏星のカリウム組成を決める観測提案をすばる望遠鏡に提出済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究をふまえ、今後はまず化学元素組成の観測データと超新星爆発元素合成モデルとの比較をよりたくさんのサンプルに適用するための手法を開発する。このような比較によって、将来的に得られることが期待される大量の観測データから初代星およびそれらの超新星爆発の性質(質量、爆発エネルギーなど)、さらに銀河系の化学力学進化にどれだけの制限をつけることができるかを検討する。また、現在観測提案を申請している金属欠乏星のカリウム組成について、観測と解析を進める。それと平行して、現在解析中である銀河系ハロー球状星団Palomar5の視線速度および化学組成解析を完成させ、星団に付随する恒星ストリームから銀河系ハローの構造および化学力学進化に制限を与えることを目指す。
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Research Products
(6 results)