2013 Fiscal Year Annual Research Report
クロマグロの高速持続遊泳に特異的な筋形成の分子機構
Project/Area Number |
13J07064
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 愛美 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | DNA / トランスクリプトーム / MYH / 筋形成 |
Research Abstract |
本研究では、クロマグロの筋形成や筋成長の過程を、種々の分子マーカーを用いた組織学的解折で詳細に記載し、各筋肉がどのような発生の系譜を持ち、どのように成長するのか、その詳細を明らかにするとともに、MYIIの発現を指標としたトランスクリプトーム解析で、クロマグロの筋形成や筋成長過程で働く分子ネットワークの全体像を明らかにすることを目的として、実験を進めている。昨年度はクロマグロの筋形成に伴うMYHおよび関連分子の発現パターンの解析のため、次世代シーケンサーを用いてトランスクリプトーム解析を行った。クロマグロのヨコワ3個体の普通筋、表層血合筋、深部血合筋および心筋のよりcDNAライブラリーを作製しIon PGMシーケンサでシーケンスを行った。得られた配列情報のうち、Q20 (evaluation measure of base calls)以上のものがそれぞれ、41.61、21.97、133.81および209.71Mbpで、リード数はそれぞれ、371,727、236,418、1,673,731および2,168,155であった。クロマグロ背側普通筋、表層血合筋、深部血合筋および心筋から得られた全455 Mbpの配列情報を用いて、CLCGenomics Workbenchソフトウェアを用いたde novoアセンブリの結果、23,777個のコンティグが形成された。200 bp以上のコンティグは23,465個あったが、このうち1,834個のコンティグの演繹アミノ酸配列をNCBIのnon-redundantタンパク質データベースに対するBLAST検索に供し、アノテーションを行ったところ、うち855個のコンティグが何らかの既報の配列と相同性を示した。ここにはMYHをコードすると思われるコンティグが24個存在しており、うち一つは既に我々が全長を同定した速筋型のMYH (myhf1)と配列が一致した。また、マイオスタチン、トロポニン、トロポミオシンやα-actinなど筋分化や筋収縮運動に関係する遺伝子が40個存在していた。クロマグロ深部血合筋におけるトランスクリプト一ム解析で得られたコンティグの演繹アミノ酸配列をBLAST検索に供した結果、MYH7bに相当するコンティグが5個得られた。MYH7bは、哺乳類と魚類で報告されている遅筋/心筋型MYHの一つであり、同遺伝子中にある小分子RNAを介し、筋肉のタイプ特異的な遺伝子の転写制御にも関与することが知られている。これらcontigに対し、得られたリードのマッピングを行い、クロマグロ背側普通筋、表層血合筋、深部血合筋および心筋の4部位でMYH7bに相当するコンティグが発現しているかを確認したところ、いずれについても背側普通筋では発現が全く見られなかった。さらに、RT-PCRおよびリアルタイムPCRを行った結果、MYH7bに相当するcontigについて普通筋では転写産物は検出されず、遅筋および心筋に特異的な発現が確認された。また、2個のコンティグは深部血合筋でのみ検出され、深部血合筋の形成との関わりに興味がもたれた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、次世代シーケンサーを用いてクロマグロ部位別のシーケンスデータを得ることができた。現在、その解析を進めている。また、稚魚、幼魚等成長段階に応じた個体を用いて発現解析を行う予定であったが、サンプルの入手が困難であったため進まなかったが、今年度、入手できそうな目星が立ったため、そのまま実験を継続する。
|
Strategy for Future Research Activity |
得られたトランスクリプトームデータを基に筋肉の特定の部位、特に深部血合筋に特異的に発現する遺伝子をスクリーニングし、稚魚、幼魚、成魚等成長段階のクロマグロの筋肉におけるこれら遺伝子の発現パターンをin situ hybridizationやリアルタイムPCRで調べる。また、同試料を用いて、モデル生物で明らかにされているMYHの発現に影響するSox6やmiRNA499などを含む筋形成および筋成長ネットワーク分子の発現パターンを、in situ hybridizationや抗体を用いた免疫染色等で調べ、各部位の筋肉の発達や成長過程を観察する。これら結果から、クロマグロ特有の分子ネットワークを解析するとともに、MYHの発現と連動する新規遺伝子のスクリーニングを行う。
|
Research Products
(2 results)