2013 Fiscal Year Annual Research Report
近代書籍批評の調査・収集に基づく近代小説受容史の構築
Project/Area Number |
13J07080
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
富塚 昌輝 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本近代文学 / 批評 / 読書論 / データベース / 小説受容史 |
Research Abstract |
本研究は、近代文学成立期であると同時に近代批評成立期でもある明治10年代後半から明治20年代の時期を対象として、この時期における小説受容の様態を解明し、近代小説受容史の基盤を構築することを目的とする。 本年度は近代小説受容史の研究基盤を構築するため、近代書籍批評目録の作成を行った。『国民之友』、『女学雑誌』、『東洋学芸雑誌』、『出版月評』、『青年文学』、『早稲田文学』を対象として、明治15年から明治30年までの書籍批評記事の調査・収集を行った。近代書籍批評目録の作成にあたっては、批評記事の評者・表題・掲載年月・誌面情報の整理を行った。また、批評対象書籍の作者名・書名・出版年・出版元といった書誌情報の整理も同時に進めた。 また、複合的な視点に基づく近代書籍批評の批評意識及び方法の解明を図るため、「『出版月評』の〈批評〉思想―出版法制との関係に注目して―」(出版法制史研究会、2013・12・7)と題する口頭発表を行った。本発表では、ノルマントン号探検事件をめぐる名誉回復の訴訟を取り上げ、批評と誹毀(名誉毀損)との関係について考察した。批評と誹毀との関係については、当時の批評専門誌であった『出版月評』においても度々問題とされていたが、同じ時代に司法の領域においても同様の問題が扱われていたことが明らかになった。 さらに、近代小説受容史研究の観点を取り入れることで、多面的・複合的に近代小説の成立機構を捉え直すため、「都市・巡査・小説」(国文学特殊研究〔慶應義塾大学〕、2013・10・13)と題する口頭発表を行った。本発表では、『国民之友』に掲載された饗庭篁村「良夜」(1889・8)を取り上げた。「良夜」は「自伝体」(一人称表現)の採用など近代小説の属性を多く有する作品であるが、その背景として『国民之友』という受容空間が重要な役割を果たしていたことについて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代小説受容史の研究基盤を構築するため、対象雑誌を総覧する作業を通じて批評記事の調査・収集を行ったことは、本年度の重要な成果である。また、上記の作業と並行して近代書籍批評の批評意識及び方法の解明に向けた口頭発表を行ったことも、研究目的の達成への重要な成果である。これらの成果が得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を推し進めるために、近代書籍批評目録の作成作業を継続する。特に、今後は新聞記事を対象として批評記事の調査・収集を行う。また、雑誌に掲載された近代書籍批評を対象として、それらの批評意識及び方法の分析を行い、論文化することを目指す。
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Research Products
(1 results)