Research Abstract |
パラメトキシベンジル基は, ベンジル基とは異なる条件下で温和・選択的に除去できるため, 有機合成上有用な保護基として汎用されている。ところが, 従来の反応剤であるパラメトキシベンジルハライドやパラメトキシベンジルトリクロロアセトイミダートは, 熱や湿気に対する安定性が不十分であるため, より安定で扱いやすい反応剤の開発が望まれる。そこで, 2012年度に開発した酸触媒トリアジン型ベンジル化剤2,4,6-tris (benzyloxy)-1,3,5-triazine (TriBOT)のコンセプトに基づき, 新規酸触媒トリアジン型パラメトキシベンジル化剤として2,4,6-tris (p-methoxybenzyloxy)-1,3,5-triazine (TriBOT-PM)の開発を行った。TriBOT-PMを用いた酸触媒パラメトキシベンジル化反応には, 様々な溶媒(1,4-ジオキサン, テトラヒドロフラン, 1,2-ジメトキシエタン, 酢酸エチルなど)や酸触媒(トリフルオロメタンスルホン酸, カンファースルホン酸, 三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体など)を利用することができ, 塩基性条件に弱いものはもちろん, 酸性条件に弱い種々のアルコールに対しても反応を実施可能であることが分かった。本反応剤は安価な合成原料から簡便に製造が可能な上, 刺激性や吸湿性を持たず, 空気中室温下で安定な固体であるため, 取扱いが容易である。従って, 従来のパラメトキシベンジル化剤より合成コストや安定性において優れており, 将来的には研究室レベルの合成のみならずプロセス合成などの工業的利用が可能と期待される。以上の通り実用性の高い反応剤の開発に成功したことから、期待以上の研究成果を達成したと言える。
|