2015 Fiscal Year Annual Research Report
二十世紀前半期における検閲・メディア・文化と文学表現の生成-永井荷風を視座として
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13J07152
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岸川 俊太郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 谷崎潤一郎 / 永井荷風 / 日本近代文学 / 日仏交流 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、20世紀前半期を通じて創作活動を続けた永井荷風と同時代状況との関わりを多角的な視点から把握することにある。こうした観点から、本年度は荷風と密接な関係のある同時代の文学者、谷崎潤一郎に焦点を当て、課題達成に向けての研究活動を進展させた。具体的には、上海で開催された谷崎潤一郎研究会・国際シンポジウムにおける口頭発表、及び、同発表に基づく論文の作成を行った。 まず、国際シンポジウムにおける口頭発表「1920年代における日本文学の国際的位置―谷崎潤一郎の翻訳作品を中心に―」では、大正期に発表された谷崎の戯曲『愛すればこそ』(1921~1922)のフランス語訳 Puisque je l’aime,1925 に焦点を当てた。仏訳版『愛すればこそ』の出版背景を検討することで、1920年代の日本文学の国際的位置について考察した。 続いて、同発表の成果を踏まえ、論文の作成を行った。同論では、翻訳をめぐる同時代の諸状況に注目することで、1920年代の日本とフランスをめぐって織り成された国際的な文化折衝の様相の一端を解明した。これまで谷崎と西洋の関係は、谷崎が〈西洋〉をどのように受容したのかという谷崎側の観点から捉えられてきたが、『愛すればこそ』の仏訳出版は、谷崎がどのように〈西洋〉で受容されたのかという、両者のもう一つの側面を浮かび上がらせる。それは、自分の作品が西洋で読まれる可能性を谷崎が潜在的に意識したことに注意を向けることに他ならない。そして、こうした西洋への谷崎の姿勢は、西洋と日本との関係を双方の立場から重層的に捉える眼差しと繋がっている。谷崎が自作品の翻訳を通して、日本文学に対する国際的な眼差しを一人の表現者として獲得したことは、これまでの理解を問い直し、谷崎文学を新たに位置づけ直す一つの手掛かりとなるはずである。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(2 results)