2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J07198
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
長澤 伸樹 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 楽市楽座令 / 楽市 / 楽座 / 市場法 / 都市法 |
Research Abstract |
本研究は「楽市楽座令」「楽市場」を素材として、関連史料の再検討と現地景観調査を重ねた学際的研究から、各地域固有の社会情勢をふまえた法令・市場の機能と特質を再評価し、大名権力の流通政策における法令・市場の相対的位置づけと歴史展開を可視化するため、中世市場法の悉皆収集とデータベース作成を目的としている。 初年度はまず、当該研究を進めるにあたり必要な基礎作業として、1, 戦前以来の研究史整理と、問題点ならびに課題を抽出した。その上で、2. 楽市楽座令をめぐる個別事例の再検討と関連地域の現地調査に取りかかり、3. データベース構築に必要な機器・刊本の購入と、全国各地に残る中世市場法の収集作業を同時並行ですすめた。 具体的な成果としては、1. 「楽市楽座令研究の軌跡と課題」(『都市文化研究』第16号、2014年3月)を発表した。 2では、(1)近江金森、(2)駿河富士大宮、(3)小山を対象とし、(1)金森寺内町景観調査と善立寺所蔵・天保7年「金森村絵図」の実見、②明治年間の地籍図・富士大宮門前町現地調査と、「富士大宮楽市令再考」(東北史学会大会、10月13日)・「富士大宮楽市令の再検討」(大阪歴史学会中世史部会、12月6日)の口頭発表をおこなった。 3は、楽市楽座令の登場から消失に至る展開と、中近世移行期における市場経済の変容過程を明らかにするため、16世紀初頭から幕藩体制成立の17世紀中期までを範囲として、国立国会図書館本館・各大学図書館・各公立図書館等において、既刊の各自治体史・史料集を総めくりし、対象となる文書・記録類の収集・複写にあたった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究史整理と課題に関する論文公表のほか、具体的な個例研究とデータベース構築に必要な史料収集についても、概ね計画通りに進められた。とくに本年度は個別事例の再評価から、いわゆる地域固有の「楽市」像の一端が明らかとなり、従来の研究にいう戦後復興と空間興隆のシェーマのみに拠らない、地域社会論の視座で当該テーマを再考する必要性を改めて指摘できたことは大きな成果である。 ただし、「楽市」の歴史的性格や展開過程をめぐって、その全体像をどう把握・再評価し、中近世移行期論に位置づけていくべきかといった点までは未だ明らかでなく、今後更なる事例分析を重ねていく必要があるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、前年度までに果たせなかった個別研究成果の公表に取り組むことを第一に、引き続き他の事例研究と口頭発表についても積極的におこなっていく。なお、かかる分析手法については文献、とりわけ中世法制史料が中心となっているが、次年度以降は単なる「継続」という形に終始せず、近世史料からのアプローチと現地景観・地籍図調査の回数を重ねることで、より地域の実態に即した「楽市」のあり方を、多角的視点で明らかにしていく必要があると考える。また、データベース化については必要な史料・記録の収集に多くを割いたため、雛型の作成については殆ど手付かずとなっており、その方法を含めて今後の課題である。
|
Research Products
(4 results)