2013 Fiscal Year Annual Research Report
前近代イスタンブルの都市空間に関する研究-街区とその住民構成に注目して
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13J07246
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Research Institution | 東京外国語大学 |
Principal Investigator |
川本 智史 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 特別研究員(PD) (10748669)
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Keywords | イスタンブル / オスマン朝 / 街区 / 検地台帳 / 都市構造 / ユスキュダル / ワクフ |
Research Abstract |
本年度は研究計画に従い、イスタンブルのマハッレ(街区)構造の分析に努めた。 まず、1455年のイスタンブル検地台帳(tahrîr defteri)と、1546年のイスタンブルワクフ調査台帳を手がかりとして、1453年イスタンブル征服直後の都市復興の実態を分析した。前提となる都市内での不動産所有形態を、「私有地」「一般ワクフ地」「スルタンのワクフ地」と整理することでその性格を明らかとし、土地の下賜をとおしてオスマン朝政権が都市開発をコントロールした様子が判明した。また1455年の検地台帳に登場するマハッレの位置を分析することで、中心部ではワクフによる都市開発が進む一方、イスタンブルの周縁部にはムカータアという借地制度を基盤とした異なる性格の都市空間が広がっていたことが判明した。この内容については、今年度実施する現地での史料調査の結果をふまえたうえで、2014年度に論文として投稿予定である。 さらに都市空間と建築空間の関連を考察するため、博士課程より研究を続けているイスタンブル旧宮殿についての資料調査をおこない、現在投稿論文を執筆中である。とくに着目したのが、15世紀後半オスマン朝に来朝したヴェネツィアやジェノヴァなど、イタリア人の記録である。イタリア語ないしラテン語で書かれたこれら史料群は、今日までオスマン朝研究者によってはあまり目が向けられてこなかったものであるが、オスマン語史料にはあらわれない内容を含む点で大変重要な史料である。本年度はその内容を分析することにより、15世紀後半から16世紀前半にかけてのイスタンブル旧宮殿の敷地域の変遷をたどることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は15世紀後半のイスタンブルの都市空間の解明につとめ、研究実績の概容でのべたように新たな史料の分析をおこなった。不動産所有形態の違いや地域間の偏差が考察から明らかになったものの、得られた知見は現在論文執筆中の段階であるあるため、「②おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目も引き続きイスタンブルの都市構造分析につとめる。まず2014年5月から6月にかけてトルコおよびイタリアに出張して資料調査をおこなう予定である。トルコではユスキュダル地区の法廷台帳を調査し、イタリアではヴェネツィア国立文書館での基礎調査を実施の上、文献調査をおこなう。またユスキュダルでは街区巡検も実施して、簡易な図面を作成する予定である。得られた知見は論文として公表する。 また2014年10月にハンガリー・ブダペストで開催されるCIEPO (Comité International des Études Pré-Ottomanes et Ottomanes)での発表は、1年目の成果をもとにしたもので既に査読を通過している。
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Research Products
(4 results)