2013 Fiscal Year Annual Research Report
和漢曲水宴に関する総合的研究 -中近世期を中心に、人文科学全域からのアプローチ-
Project/Area Number |
13J07257
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
李 増先 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 曲水宴 / 朝倉義景 / 三条西公条 / 一乗谷曲水宴 / ケンブリッジ大学図書館 / デジタルアーカイブ / 徳川吉宗 / 享保十七年曲水宴 |
Research Abstract |
本研究は曲水宴を対象としている。曲水宴とは、緩やかな流水に沿って着座し、上流から流れ来る酒杯を順次にとり、酒を汲みつつ、詩歌を詠じる宴である。本邦では『懐風藻』をはじめ、『万葉集』等にも詠作が残されている。また、『源氏物語』をはじめとする仮名文学、漢文による公家の日記類にも多見され、さらに絵画の題材としての曲水宴もよく知られている。人文学全域にわたり、曲水宴を考察することにより、成果を多分野に還元することが期待される。今年度は、以下の三点に中心に研究を進めてきた。 1、『永禄五年一乗谷曲水宴詩歌』の解釈 戦国時代の永禄五年(1562)、越前国を領地とした朝倉氏の当主である義景が自らの拠点である一乗谷に、京都大覚寺門主義俊を迎え、「八月廿一日」に曲水宴を催した。本年度は従来の諸本関係を見直し、三条西公条が該当曲水宴に寄せた序文の解釈を行い、詩歌の配列問題についても検討した。成果を和漢比較文学会(2014年4月)で報告し、現在論文を執筆中である。 2、海外研究機関所蔵資料の調査およびデジタルアーカイブの作成 英国ケンブリッジ大学付属図書館で資料収集を行った。調査と同時に所蔵品のデジタル撮影が許され、期間中は89点の所蔵品の調査し、同時に写真撮影した。その後は同図書館の許可を取得し、現在ウェブ上で研究者向けに画像データを公開している。収集した資料は学位論文の執筆に用いる予定である。 3、「享保十七年曲水宴」の翻刻 享保十七(1732)年に徳川家八代目将軍吉宗邸で開催された「曲水宴」のテキストの翻刻に着手した。当該曲水宴の本文は「射和文庫」をはじめ、「陽明文庫」・「尊経閣文庫」・「宮内庁書陵部」・「史料編纂所」に諸本を残す。翻刻は「射和文庫」所蔵本を中心に、諸本を比較したうえで、本文異同をまとめ、学術誌へ投稿する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度当初の研究計画の「紀師匠曲水宴詩歌」の解釈を完成し得なかったが、改めて中世以降の曲水宴に焦点をあて、研究対象の文学史的意義を見出し、学会に成果を寄与した。同時に、研究対象の認知度も高められた。また、調査過程に収集した資料はウェブ上で研究者向けに公開し、研究資源の共有化ができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度以降も、当初の研究計画の予定より多少変更し、遂行したいと考えている。平成26年度は、当初の研究計画に加え、平安初期、紀貫之のもとで開催された「紀師匠曲水宴詩歌」の文学史的位置づけを完成させることをも目標としている。 また、今年度の学位取得を視野に入れつつ、学位論文を執筆する。提出後は日本国外の学会で成果を報告したいと考えている。
|