2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J07263
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山中 一宏 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 光格子時計 / 精密分光 / 紫外レーザー / 次世代時間標準 / 原子時計 |
Research Abstract |
本研究では、水銀光格子時計を動作させるための課題であった時計遷移励起レーザーの開発を行ったうえで、水銀光格子時計の時計としての動作を行い、その不確かさの評価を行った。 時計遷移励起レーザーは紫外でHzレベルという超狭線幅が要求される。本研究では、光周波数コムを介して波長の異なる超狭線幅レーザーに対して周波数安定化を行うことによりこれを実現した。また、このレーザーによる^<199>Hgの時計遷移の励起スペクトルは7.5Hzの半値全幅を達成し、時計遷移励起レーザーがHzレベルの超狭線幅であることを実証した。 時計遷移励起レーザーが実現したことにより水銀光格子時計を動作させ、その精度の評価を行うことが可能となった。そこで、^<199>Hg光格子時計の精度を評価するために、^<87>r光格子時計を参照とした周波数比較実験を行った。周波数比較実験の結果、安定度にして2800秒の平均化時間で4×10^<-17>の不確かさに到達した。これは現在の時間標準である最高性能のCs原子時計を1ケタ以上上回る安定度であり、^<199>Hg光格子時計のCs原子時計に対する優位性を示すものである。また、本実験で得られた^<199>Hg光格子時計と^<87>Sr光格子時計の周波数比は先行研究と不確かさの範囲内で一致し、その再現性の高さは時計としての性能を示すうえで重要な結果であるといえる。また、^<199>Hgの魔法波長を先行研究より50倍程度良い不確かさで決定した。魔法波長は光格子時計の確度を決める重要なパラメータの1つであり、その不確かさを大きく向上させたことは確度の向上に直結する重要な成果であると考えている。 以上の研究成果は、その精度と他機関での実験との再現性の高さから、次世代時間標準の有力な候補として位置づけられる「秒の二次表現」への^<199>Hg光格子時計の採択を強く後押しするものであり、近い将来に期待されている秒の再定義に向けて大きなインパクトがあるものと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画である2台の水銀光格子時計間の周波数比較を行う代わりに、低温動作ストロンチウム光格子時計と水銀光格子時計の周波数比較実験を行い、水銀光格子時計の不確かさの評価を行った。評価手法に変更はあったものの、水銀光格子時計が既存のセシウム原子時計の安定度を一桁以上上回ることを示し、その有用性を実証できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
水銀光格子時計の不確かさの主要因としては、光格子レーザーによるACシュタルクシフト、浮遊磁場によるゼーマンシフト、原子間相互作用によるシフトが挙げられる。これらの不確かさを、水銀光格子時計の自己参照周波数比較、またはストロンチウム光格子時計との周波数比較実験によって系統的な不確かさの検証を行う。 今年度までの安定度評価と今後計画している種々の系統的な不確かさの検証をまとめ、現在の時間標準を超える精度での^<199>Hg光格子時計の性能評価に関する論文を投稿する予定である。
|
Research Products
(3 results)