Research Abstract |
平成25年度での研究は, 超ナノ微結晶ダイヤモンド/アモルファスカーボン混相膜(以降UNCD膜)によるホモpn接合形成のための基盤研究となる, ホウ素(B)および窒素(N)ドープによるp型およびn型UNCD膜のキャリア濃度制御を含めた伝導型制御法を確立することに注力した. 今回はUNCD膜の欠陥構造に寄与すると考えられる水素に着目し, 水素含有量の異なるp型UNCD膜を作製・評価することで水素化と光・電気特性の相関解明を試みた. 膜中の水素原子はUNCD結晶粒を終端して存在しており, 電気特性および受光特性に大きく寄与していると推察される. 本研究では, 電気的な評価にて, UNCD膜の水素化により, 水素化しないものに比べて試作したヘテロ接合ダイオードの整流特性が2桁以上の向上することがわかった. これはダイオード逆方向電圧印加時のリーク電流の低減を意味しており, リーク電流の抑制は光電変換特性の向上に大きく貢献する成果である. 上述のダイオード整流性向上の要因として, UNCD膜の構造的観点から, (i)キャリアトラップを誘発する不対電子の水素終端, (ii)炭素原子の結合の変化が関わっていると考察される. (i)に関しては, 水素化によるUNCD膜中の欠陥構造の変化を電子スピン共鳴(ESR)測定でのシグナルに違いで観測することができたが, 一部シグナル強度が弱く絶対量による比較までには至らなかった. 今後の課題として絶対量の見積りが必要ある, また(ii)に関しては, 放射光を用いたNEZAFS, XPS測定を実施することでUNCD膜中の化学結合状態の解明を試みた結果, 水素化によって炭素のsp31 (sp2+sp3)の増加が確認された. UNCD膜の水素化によりUNCD結晶に由来するsp3結合が増加することで, 膜中で電気伝導率が高いアモルファスカーボンマトリックスの寄与が律速され, 粒界の効果が顕著に現れたためと考察している. 今年度の研究では, UNCD膜の光電気特性に及ぼす水素化の効果を検証し, 光・電変換素子として用いるには水素化は必要不可欠であることを明らかとした.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は水素化の効果を検討することでUNCD膜のp,n型層としての電気特性の制御の確立を軸に進めてきた. 今後はp,n型UNCD膜のキャリアの濃度の最適化および光電変換層としての機能を評価する. また上述の課題と並行して, ホウ素, 窒素ドープUNCD膜によるpnホモ接合のダイオードの創製に試み, 光電気特性の評価を試みる.
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