Research Abstract |
1)スピロ化合物のキラリティーを利用するエナンチオ選択的触媒反応の開発 含窒素六員環化合物であるテトラヒドロピリジンは、天然物や薬理活性化合物の部分骨格によく見られる構造であり、その合成研究が精力的に行われている。α-アルキルアレノエートとイミンとの形式的[4+2]環化付加反応は、中でも最も直接的な合成法の一つである。キラルホスフィンであるBINAP, QUINAPを用いた場合には、ほとんど反応は進行せず、進行しても位置異性体の混合物となり、その位置選択性は低い結果となった。キラルスピロ骨格を有する(R)-SITCP触媒を反応に用いたところ、生成物が高化学収率、高不斉収率で単一の位置異性体として得られた。(Takizawa, S. ; Arteaga, F. A. ; Yoshida, Y ; Suzuki, M. ; Sasai, H. Asian. J. Org. Chem, 2014, 3, 412.)。 2)酸塩基型不斉有機分子触媒の創製と応用 新規なP-キラルホスフィン触媒の開発を行った。本触媒をエノンとケチミンのaza-MBH反応に用いると、医薬品中間体等のキラルビルディングブロックとして興味深い. α, α-二置換アミノ酸誘導体が最高97%eeで得られることを見出した。(Takizawa, S. ; Remond, E ; Arteaga, F. A ; Yoshida, Y ; Sridharan, V ; Bayardon, J. ; Juge, S. ; Sasai, H. Chem. Commun. 2013, 49, 8392.)(Highlighted in Synfacts, 2013, 9, 1297.) 3)1,2,3-トリアゾールの多機能化 1,2,3-トリアゾールは、アジドとアルキンの[3+2]環化付加反応により容易に得られる化合物であり、極めて多様な分野で研究・利用されているものの、本ヘテロ環自体の機能、特に不斉触媒への応用は限られている。今回、1,2,3-トリアゾール部位を有するヘテロヘリセンの不斉触媒反応への応用を目指して、キラル超原子価ヨウ素試薬を用いる酸化的ビアリールカップリング反応を鍵とするヘリセン様分子の合成を検討した。結果、既知物から三段階で得られるトリアゾールに、乳酸を不斉源とするキラル超原子価ヨウ素試薬を作用させると、カップリング体が中程度の化学収率、及び不斉収率で得られた。本カップリング体の脱メチル化、続く環化により、ビストリアゾールヘリセン様分子の合成を達成した。
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