2013 Fiscal Year Annual Research Report
熱的ヒステリシスを示すキラル合成二重ラセン分子の開発と熱応答物質機能の構築
Project/Area Number |
13J07424
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
串田 陽 東北大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヘリセン / オリゴマー / 二重ラセン / 熱的ヒステリシス / 熱応答性材料 |
Research Abstract |
本研究は、スルホンアミド基及びアミノメチレン基で連結したヘリセンオリゴマーを各種合成し、ラセン二量体―ランダムコイル間の構造変化に基づく熱的ヒステリシス特性を制御する。これをミリあるいはセンチメートルレベルの物質変化に応用することを目的とする。本年度では熱的ヒステリシス制御を目指し、溶媒や温度などの条件を変えてヒステリシスの性質を調べた。 スルホンアミドヘリセンオリゴマー四量体を用い1,3-ジフルオロベンゼン中、分子レベル熱的ヒステリシスの性質を調べた。加熱状態からある温度まで冷却して静置した時の経時変化を調べた。その結果、45℃と50℃においてランダムコイルから二重ラセンの構造変化過程で誘導期が存在した。また、様々な一定温度変化測定により二重ラセンへの構造変化開始には40℃付近にしきい値があることを見出した。一度40℃を下回るとラセン二量体形成が加速した。これらの結果より、分子レベルの熱的ヒステリシスは構造変化の初速が遅く、誘導期後に反応速度が急激に増大することで起こる。これらは分子レベル熱的ヒステリシスの発現機構を解釈する上で重要な結果である。 擬鏡像の関係にあるアミノメチレンヘリセンオリゴマーの四量体/五量体を用いて三状態一方向構造変化を達成した。フルオロベンゼン中、70℃/25℃で加熱/冷却する方法を見出した。70℃の100%ランダムコイル状態から25℃へ冷却すると、全ての分子がヘテロ二重ラセンAを形成した。次に静置すると、ラセン反転を伴い約70時間後に全ての分子がヘテロ二重ラセンCへ構造変化した。最後に加熱を行い再び100%ランダムコイルに戻した。すなわち、ヘテロ二重ラセンAとBの選択性が非常に良い熱的ヒステリシスサイクルを達成した。 これまでに例のない分子レベル熱的ヒステリシスの性質と発現機構の精査およびユニークな熱応答サイクルを達成した。これらの結果は、新規な熱応答性物質機能を生み出す上で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載したように、本年度ではスルホンアミドヘリセンオリゴマーおよびアミノメチレンヘリセンオリゴマー誘導体の合成、またそれらが示す溶液中の分子レベル熱的ヒステリシスについてその性質を精査することを目的としていた。スルホンアミドヘリセンオリゴマーに関して、分子レベル熱的ヒステリシスの発生要因は誘導期とその後の反応速度上昇であることを見出した。また、26年度の内容に記載したアミノメチレンヘリセンオリゴマーによる3状態熱的ヒステリシスサイクルの達成を今年度中に達成した。熱的ヒステリシスの性質の精査および新しい熱的ヒステリシスサイクルの構築を今年度中に達成した点を考慮し、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、熱的ヒステリシスの誘導期が何に由来するかを調べ、今までほとんど研究されていない分子レベル熱的ヒステリシスの発現機構を深く理解する。熱的ヒステリシスと自己触媒機構の関係を調べる。現時点において自己触媒機構で熱的ヒステリシスが発生している実験結果をいくつか見出している。例えば、系に生成物である二重ラセンを添加することで反応を加速できる知見も得ている。濃度、温度を変えて測定を行い外部条件に対する自己触媒作用の変化を精査する。自己触媒を利用して熱的ヒステリシスの速度制御や発現温度域制御を行う。 熱的ヒステリシスを目に見える機能へと応用する。末端などに機能性部位(液晶やゲル化部位)を有するオリゴマーを合成する。末端を変えることでオリゴマーの熱応答は多少変化することは懸念されるが、これまでに得た熱的ヒステリシスの制御に関する知見(溶媒効果、濃度効果、および置換基効果)を生かす。
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Research Products
(4 results)