2014 Fiscal Year Annual Research Report
熱的ヒステリシスを示すキラル合成二重ラセン分子の開発と熱応答物質機能の構築
Project/Area Number |
13J07424
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
串田 陽 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘリセン / オリゴマー / 二重ラセン / 熱的ヒステリシス / 熱応答性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スルホンアミド基及びアミノメチレン基で連結したヘリセンオリゴマーを各種合成し、ラセン二量体とランダムコイル間の構造変化に基づく熱的ヒステリシス特性を制御する。これをミリあるいはセンチメートルレベルの物質変化に応用することを目的とする。本年度では、スルホンアミドヘリセンオリゴマーの自己触媒反応およびそれに伴う濃度増幅現象、刺激の1・2回目を区別する機能について研究を行った。 スルホンアミオリゴマーのランダムコイル溶液とラセン二量体溶液を混合するとラセン二量体形成が進行した。したがって、ラセン二量体は自己触媒的にランダムコイルからラセン二量体形成を促進したと考えられる。自己触媒反応がランダムコイル2分子とラセン二量体1分子による反応と仮定した速度論解析において実測値と計算値が非常によく一致した。自己触媒的ラセン二量体形成反応を見出した。 自己触媒反応を用いることで濃度を感知する物質システムおよび数1,2を数える機能を構築した。オリゴマーのランダムコイル溶液にランダムコイルを添加して濃度を上昇させるとラセン二量体形成が進行した。添加なしではランダムコイルのまま変化しない。このラセン二量体形成は自己触媒によるものであり、濃度増幅を伴った。たとえば、ランダムコイルの濃度を1.17倍にするラセン二量体形成量は8倍と大きく上昇した。 これらの自己触媒反応および濃度増幅を用いることで、高感度・高速度な熱的ヒステリシス分子の構築が可能になる。これまでに得ていた温度・濃度のよるヒステリシス制御に加え、自己触媒反応を用いた制御の知見を得た。また、このオリゴマーは高温からの冷却時に1回目と2回目においてランダムコイル・ラセン二量体とその構造が異なるという数を数える機能も示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、スルホンアミドヘリセンオリゴマーの自己触媒反応および、それに伴う濃度の増幅現象を中心に研究を行った。目的としていた自己触媒反応の達成と理解に加え、濃度増幅や数1,2を数える現象という新しい物質機能を開発できた。現在はスペクトル測定での検出であるが、機能性部位との組み合わせにより目に見えるレベルまで応用したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、熱的ヒステリシスを目に見える機能へと応用する。末端に機能性部位(液晶やゲル化部位)を有するオリゴマーを合成する。様々な機能性部位を有するオリゴマーを効率よく合成することを考え、機能性部位とオリゴマーの連結にはジスルフィド結合を利用する。すなわち、私たちの研究室で開発したジスルフィド結合の交換反応を用いる。オリゴマーのジスルフィド体と機能性部位を有するジスルフィド体の間でジスルフィド交換を行うことで合成を行う。末端を変えることでオリゴマーの熱応答は多少変化することが懸念されるが、これまでに得た熱的ヒステリシスの制御に関する知見(溶媒効果、濃度効果、および置換基効果)を用いる。
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Research Products
(7 results)