2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリセン担持キラルナノ粒子による合成および生体有機小分子・大分子の不斉形状認識
Project/Area Number |
13J07469
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮川 雅道 東北大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ヘリセン / ナノ粒子 / 沈殿 / 平行移動 / 反応中間体 / 形状認識 |
Research Abstract |
本研究は、ヘリセン担持シリカナノ粒子((P)-nanoparticles)による有機分子の不斉認識および形状認識を調べ、混合物から有機分子の分離を行って、物質による情報伝達という機能を開発することを目的としている。本年度は、(P)-nanoparticlesを用いた生成物除去による平衡移動、反応中間体の捕捉の研究を行った。 平衡は多くの有機化学反応に見られ、基質と生成物の生成比は反応速度定数の比あるいは熱力学的安定性の差によって決まる。従って合成化学的観点から見ると、収率を向上させるためにはルシャトリエの法則に従って平衡を移動させる必要がある。反応蒸留、膜分離、液液二層系、析出法があるが、生成物の物性に依存する制約がある。生成物を反応系外に除去することで平衡が生成物側に移動するのが最も有効と考えられるが、一般的方法はない。効率的に生成物を取り除く一般的手法の開発が望まれる。 平衡状態で存在する2種類の化合物から一つの化合物と(P)-nanoparticlesを沈殿させることで、生成物の除去による平衡移動と収率の向上を行った。エチニルヘリセンオリゴマーは溶液中、ホモ二重ラセンとランダムコイルの平衡状態で存在する。ホモ二重ラセンが10%のみ存在する平衡混合物に(P)-nanoparticlesを加えると、ホモ二重ラセンのみを53%含む沈殿を形成した。(P)-nanoparticlesがホモ二重ラセンを吸着し、沈殿として反応系から除去することで平衡を移動させて、収率を向上した。有機大分子の立体構造変化において、(P)-nanoparticlesが生成物を吸着し、凝集、沈殿することで反応系から生成物を分離して平衡を移動した。 先に(P)-、(M)-エチニルオリゴマーを混合するとヘテロ二重ラセンを形成し、これが集合してゲルを形成することがわかっていた。反応中間体ヘテロ二重ラセンはこれまで単離されていなかった。本研究で(P)-nanoparticlesが反応中間体ヘテロ二重ラセンを吸着し、これを含む沈殿を形成することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(P)-nanoparticlesを用い、エチニルヘリセンオリゴマーの構造変化において、生成物の除去による平衡移動法を開発した。これは新たな平衡移動の方法である。また、ゲル形成における反応中間体ヘテロ二重ラセンの捕捉を行い、これまで単離することができなかったヘテロ二重ラセンを単離することができた。本年度は、ジスルフィド交換反応の平衡制御も研究したが、エチニルヘリセンオリゴマーの構造変化反応の平衡制御、重合反応の中間体単離の研究を行い、論文とすることができたので、①当初の計画以上に進展している、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(P)-nanoparticlesを用いた生成物の除去による平衡移動をロジウム触媒によるジスルフィド交換反応に適応する。生成物を(P)-nanoparticlesとともに沈殿させることで、遷移金属触媒の活性を阻害せずに平衡移動を行う。反応条件、基質、(P)-nanoparticles上のヘリセンの構造、粒子径を最適化し、定量的に生成物が得られるように平衡を移動させる。 (P)-nanoparticlesはヘリセン単量体を担持したが、ヘリセンオリゴマーを担持したシリカナノ粒子を合成する。オリゴマー担持シリカナノ粒子で、オリゴマーの粒子間会合、粒子内会合を制御する方法を確立する。ナノ粒子表面のオリゴマーの構造の違いによる形状認識能の変化を見て、表面の分子の構造と形状認識能の関係を理解する。
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Research Products
(5 results)