2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J07489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茅野 大樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ベンヤミン / ゲーテ / カント / ライプニッツ / モナド / 目的論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多岐にわたる主題を扱った諸々の著作で示されるベンヤミンの思考が、一貫してモナドのモチーフに結びついていることを示すことにある。 初年度である平成25年度は、ドイツ・フランクフルト大学の比較文学研究所に長期滞在し、主にヴァルター・ベンヤミンの前期著作およびゲーテの自然哲学に関する著作の読解を行った。とりわけベンヤミンによるゲーテ解釈をゲーテの原テクストに即して具体的に検討するために、ゲーテの『色彩論』、『形態論』また『ファウスト』、『親和力』などの著作を集中的に読解し、その成果をフランクフルト大学ドイツ文学研究科のコロキウムにおいて研究発表した。この発表では、ゲーテの自然哲学をライプニッツのモナド論およびカントの目的論の影響関係の中に位置づけることを試みた。それにより、多種多様な自然現象を統一的に認識する際の普遍的な原理である「原現象」の概念に基づくゲーテの自然認識の理論は、自然の中に「跳躍」を認めず、個々の自然を「連続性」の相の元に観察しようとする点において、ライプニッツやカントの目的論に連なることが示された。またこの研究を進める過程で、ゲーテの自然哲学とベンヤミンの歴史哲学の影響関係を考察する際に、両者が参照していたカントの目的論の考察もまた不可欠であることが浮き彫りとなった。この成果をもとに、『ドイツ悲劇の根源』においてゲーテの自然哲学の直接の影響下にありながら、「根源」と「モナド」の概念によって「連続」よりはむしろ「跳躍」を強調するベンヤミンの歴史認識論の特異性を浮き彫りにすべく、日本語による論文を鋭意執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の結果、ゲーテとカントの自然目的論に共通する、自然の「連続性」の原理を抽出することができた点で、当初の計画以上の進展があった。他方で、ベンヤミンのテクスト読解に関しては具体的な成果に結びつくには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、とりわけゲーテの著作の読解に大きな時間を割いたために、ベンヤミンのロマン主義論文およびゲーテ論に関する具体的な考察に十分に踏み込むことができなかった。今後は本年度における研究をもとに、シュレーゲルを中心としたロマン主義のテクストと共にベンヤミンの著作を読解し、ロマン主義とゲーテの批判的受容から形成されたベンヤミンの認識論の基盤が、『ドイツ悲劇の根源』においてライプニッツのモナド論と接続される過程を明らかにすべく、考察を深めていく。
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Research Products
(1 results)