2013 Fiscal Year Annual Research Report
高齢社会における持続可能な都市と地方の関係性の構築
Project/Area Number |
13J07511
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 尚悟 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高齢化 / 過疎化 / 限界集落 / 農村の多機能性 |
Research Abstract |
①秋田県上小阿仁村における農村集落の「限界化」に関する現地調査 過疎高齢化の進行によって農村集落の生活環境がどのように変化するのかを捉えるため、秋田県上小阿仁村を事例に、集落の人口規模の違いによる農村集落の「限界化」プロセスの分析を行った。村内の20集落を人口規模により5つのグループに分け、そのうち最も小規模な人口40以下の集落において、交通やアクセス、農地管理や除雪対応、集落行事の維持、近所付き合い等において明確に他の集落グループと異なる状況にあることが示された。調査は村役場と共同で行われ、その結果についても適時に意見交換の場を設けた。このことにより、短期間のうちに調査結果が現場に共有された。 ②縮小・高齢化する地方社会のあり方に関する概念的な議論 ①の調査を受け、今後さらに高齢化が進む地方社会全体のあり方を議論する際に、どのような概念的な捉え方が必要であるのかという課題が明確になった。これに対し、農村地域の多機能性に関する議論(Multifunctionality of rural systems)を中心に、文献調査を行った。この議論では、農村の食料生産や景観的価値から、より当該地域が形成してきた民俗文化や資源管理のあり方、住民の生活の質に焦点を当てる視点へと転換していく過程を説明している。これらの視点の変化は、産業構造の変化やグローバリゼーションなどの社会変革に連動する形で展開してきている。近年、日本の農村が直面している過疎高齢化は、この社会変革として捉えることができ、地方社会全体のあり方を変化させている1要件として位置づけられた。この社会変革に対して、どのように適応していくのかが今日の地方社会全体が抱える最大の課題である。本研究における農村集落の「限界化」プロセスの分析は、集落とその集合体によって形成される自治体の規模において、この議論を実証的に支持するものとして重要であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地調査において、対象地域の全20集落を網羅することができたことにより、計画よりも多くの集落の実態把握ができた。また、代表者へのインタビューの他に、ボランティア活動を通じて、より広範囲の住民に対して聞き取りを行うことができた。加えて、農村地域の多機能性に関する文献調査を通じ、より全体論的な視座から見た今後の地方社会のあり方に関する概念構築に取り組むことができた。 これらにより、当研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の前半部分である農村集落の「限界化」プロセスの分析については、これまでの上小阿仁村での現地調査において十分に行うことができた。これに加えて、農村の多機能性を中心とした文献調査によって、より長期的に農村のあり方を議論するための概念的な議論の構築を行った。今後は個別の集落だけでなく、地方社会全体へと視野を広げることで、分析の際に焦点を当てるユニットに注目しながら、当該地域内だけでなく、地域外との交流のあり方についての分析を行っていく。この段階において、また、このプロセスを今年度と同様に地域住民の方々と協力して行っていくことで、より地域の考えに沿った実現性の高い提案の構想を目指す。
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Research Products
(2 results)