2013 Fiscal Year Annual Research Report
理論上限を上回るダイレクトキャリアトラップ型次世代有機EL素子の実現
Project/Area Number |
13J07551
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
清野 雄基 山形大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タイレクトキャリアトラップ / フェナザシリン誘導体 / エキサイプレックス / エネルギー移動 |
Research Abstract |
本研究では、『理論上限を上回るダイレクトキャリアトラップ型次世代有機EL素子の実現』を目的とし、今年度は、下記の3つに関して研究を実施した。 1. ダイレクトキャリアトラップ機構メカニズムの解明これまで開発してきたダイレクトキャリアトラップ型高効率緑色リン光素子の発光メカニズムを解明するため、発光層のドープ濃度を変化させたホールオンリーデバイスおよび電子オンリーデバイスを作製し、その電流密度-電圧特性結果から、ホール、電子共に発光材料へトラップされていることが明らかとなった。そのため、実際の素子系においてもホールと電子はゲスト材料に注入あるいはトラップされ、ダイレクトキャリアトラップ機構が支配的な駆動メカニズムであることを実証した。このようなオンリーデバイス作製によるキャリア注入機構の検証を行うことは、駆動メカニズムを明らかにするために重要な検証法である。 2. フェナザシリン誘導体の開発と高効率橙色リン光有機EL素子 高い耐熱性と良好なホール輸送特性を有するフェナザシリン骨格を用いた一連のホスト材料を開発した。フェナザシリン誘導体のを橙色リン光材料のホストとして用いて素子を作製したところ、100cd/m2時に外部量子効率26.4%という高効率を達成した。積分球により評価した発光量子効率から見積もられる外部量子効率の理論上限値は15.2%であり、実際の素子の最大外部量子効率は27.3%であるため、上限値を大幅に超える素子の作製に成功した。また、PCzPzを用いた素子でドープ濃度を変化させたところ、高ドープ濃度素子において1V以上の大幅な低電圧化が確認されたことから、ダイレクトキャリアトラップ機構であることが確認された。これより、フェナザシリン誘導体はホスト材料として有用であることが実証できた。 3. エキサイプレックスからのエネルギー移動を利用した高効率かつ低駆動電圧青色リン光素子の開発 ダイレクトトラップ機構を検証するなかで、別の素子系においてホール輸送層と発光層界面で形成されるエキサイプレックスからのエネルギー移動による発光メカニズムが示唆された。これに関して駆動メカニズムの検証実験を行った。エキサイブレックスをエネルギー移動の媒体として利用することで、従来のホスト-ゲスト間のエネルギー移動を利用した素子よりも、低電圧駆動かつ高効率な青色リン光有機ELデバイスが実現できることを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高効率な有機EL素子の駆動メカニズムがダイレクトキャリアトラップ機構であることを明らかにし、新たなホスト材料を用いた理論上限を上回るダイレクトキャリアトラップ型の高効率な橙色有機EL素子の作製に成功した。また、従来のホスト-ゲスト間のエネルギー移動ではなく、新たなエキサイプレックス-ゲスト間のエネルギー移動を用いた高性能化にも成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでダイレクトキャリアトラップ型有機EL素子の開発に着手してきたが、この駆動メカニズムを用いて低電圧化を試みるにはドープ濃度を上げる必要があるが、濃度消光による効率の低下が懸念される。そのため今後の方針として、エキサイプレックスからのエネルギー移動を利用した高効率有機EL素子の開発を行って行く。また、パンドギャップエンジニアリングの確立と低消費電力有機ELデバイスの実現を目指す。バンドギャップエンジニアリングの一環として、ドナー分子とアクセプター分子の組み合わせを精密制御し、ΔEst=Oにする分子設計指針の導出を目指す。ΔEstが小さな分子は効率的な熱活性化遅延蛍光TADF)を示すため、得られた知見を活用し純青色TDF材料の開発にも着手していく。
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Research Products
(5 results)