2013 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル絶縁体薄膜・接合界面の合成とスピン偏極量子輸送現象
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13J07556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉見 龍太郎 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 量子ホール効果 / ディラック電子 / トンネル分光 / 異常ホール効果 |
Research Abstract |
[1]薄膜試料の品質向上 バルク絶縁性が高く表面伝導が支配的なトポロジカル絶縁体の薄膜試料において、成膜後におけるアニール処理を行うことで、表面平坦性を更に上昇させることに成功した。この結果、表面伝導が支配的となる低温において、試料の移動度が1,500㎠/Vs程度まで上昇した。次に、電界効果によるフェルミ準位制御を行うためのFET素子作製を試みた。ここではデバイスプロセス中に試料が熱処理や化学薬品との反応により劣化しないようにするため、表面にALD(原子層堆積法)を用いて予め数層のAl_2O_3でキャップ層を堆積させた。以上の結果は基礎的な実験技術であるが、これまでバルク単結晶が中心だったトポロジカル絶縁体の輸送測定研究をリソグラフィにより精確にデザインされたものへ拡張する重要なものである。 [2]トポロジカル絶縁体接合界面での共鳴トンネルスペクトロスコピー 非トポロジカル絶縁体である半導体InPとトポロジカル絶縁体(Bi_<1-x>Sb_x)_2Te_3との接合素子を作製し、その接合界面において共鳴トンネルスペクトロスコピーを行った。その結果、トンネル伝導度の磁場依存性にディラック分散に特徴的な磁場の平方根に比例するランダウ量子化を観測し、界面状態に二次元のディラック分散が存在していることを明確にした。本研究によって、真空に面した表面ではなく、固体結晶にディラック電子状態が存在することが明らかになり、トランジスタを始めとする種々のデバイスにおけるトポロジカル絶縁体の研究が、ディラック状態を対象にする有意なものであると初めて確約できるようになった。 [3]異常化量子ホール効果の観測 Crをドープしたトポロジカル絶縁体(Bi, Sb) 2Te3において、異常ホール効果を巨大化させまた先述のFET素子作製技術を組み合わせることで、低温において量子化異常ホール効果を再現よく観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル絶縁体の薄膜試料の品質向上を実現し、更にフォトリソグラフィの技術を用いてホールバー形状のFET素子加工を実現させた。それらを用いることにより、当初研究目的として掲げていたホール効果を用いた量子輸送だけでなく、トンネル接合素子における界面準位の観測にも至った。
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Strategy for Future Research Activity |
トポロジカル絶縁体と他の固体結晶との界面における電子状態を、磁性ドープによって時間反転対称性が破れたトポロジカル絶縁体においても探索する。磁性ドープされた系ではギャップの小ささや原子レベルで試料表面が均質でないなどの問題で角度分解光電子分光や走査型トンネル顕微鏡ではまだ研究が進んでおらず、接合界面におけるトンネル分光による進展が期待される。物理的には、フェルミ準位の位置と強磁性転移温度、ギャップの大きさ、転移磁場等を調べることで、未だ議論に決着がついていない強磁性発現機構を議論する。しかしながら、現在対象としている磁性不純物をドープしたトポロジカル絶縁体Cr(Bi,Sb)2Te3は物質としては4元素系であり、試料品質、面内均一性の問題からノイズの小さい信号を検出するのは難しい、そこで前年度確立したフォトリソグラフィによる素子加工技術を用いて、ノイズが減少する小サイズのデバイスを作製し測定を行う。
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Research Products
(5 results)