2014 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル絶縁体薄膜・接合界面の合成とスピン偏極量子輸送現象
Project/Area Number |
13J07556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉見 龍太郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 量子ホール効果 / ディラック電子 / 異常ホール効果 / 異常量子ホール効果 / 薄膜試料 |
Outline of Annual Research Achievements |
トポロジカル絶縁体の薄膜試料合成を行い、表面・界面におけるディラック電子状態の量子輸送現象観測を目的としている。特に、二次元表面状態に由来する量子ホール効果、及び磁性不純物を添加して量子化異常ホール効果について研究を行った。 [1]薄膜試料の品質向上・量子ホール効果の観測・異常量子ホール効果の観測 ディラック状態の物性を探求する上で、バルク伝導が抑制され、試料のフェルミ準位がディラック点近傍に制御されることは必須である。申請者は分子線エピタキシー法を用いた薄膜試料合成によって、(Bi1-xSbx)2Te3におけるキャリヤー制御の技術を行った。また電界効果トランジスタデバイスによるフェルミ準位制御を行い、磁場下において量子ホール効果をトップゲート薄膜素子として初めて観測した。異常量子ホール効果については、Crをドープしたトポロジカル絶縁体Crx(Bi,Sb)2-xTe3おいて、先述の電界効果デバイス技術を組み合わせることで異常量子ホール効果を観測した。特にCr濃度依存性について詳細に調べることで、不純物散乱が少なくゼロ磁場でも量子ホール状態を実現する試料作製技術の開発に成功した。 [2]磁性/非磁性トポロジカル絶縁体の積層構造 (Bi,Sb)2Te3上に、磁性元素Crを添加したCr(Bi,Sb)2Te3を積層させた二層膜を作製し、その物性を測定した。電界効果素子を作成し、磁場下での輸送測定を測定したところ、二層膜において磁場下で正常ホール効果・異常ホール効果の足し合わせで量子ホール効果を観測した。しかも、二層膜における量子ホール効果の発現温度が非磁性単層膜における量子ホール効果、磁性単層膜における異常量子ホール効果のいずれよりも10倍近く高いことを見出した。今後積層構造を用いることでさらなる観測温度の上昇が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
薄膜試料・デバイス作製技術が一定の水準に到達し、今後の研究を進める上での技術基盤が整ったこと、更に今後の研究方針を形作る重要な実験データが、予備的ではあるが出たためである。 前者についてはトポロジカル絶縁体における量子ホール効果、異常量子ホール効果を再現性良く発言させることができ、また電界効果素子によるフェルミ準位制御も行うことが出来るようになった。一方、後者については、磁性・非磁性トポロジカル絶縁体の二層膜において以前よりもはるかに高温で量子現象が発現することを発見したことである。上記2つの研究発展によって、今後の研究計画を方針立てることができるようになった
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Strategy for Future Research Activity |
積層薄膜を用い、トポロジカル絶縁体の表面状態に磁性体を近接させる。表面ディラック状態で時間反転対称性を破りつつ、バルクの不純物準位を抑制することで、異常量子ホール効果の観測温度を上昇させる。今まで異常量子ホール効果が観測されていたのは、磁性トポロジカル絶縁体の単層膜であったが、単層膜では、バルク内部の磁性元素由来の不純物準位、もしくは格子欠陥が三次元的な伝導を生じやすく、これが二次元量子化を困難にしている可能性がある。積層構造を用いてバルク不純物を低減することで、異常量子ホール効果の観測温度上昇が期待される。実際には、磁性・非磁性・磁性の三層構造から、電界効果トランジスタ(FET)デバイスを作製することでフェルミ準位をディラック点近傍に制御した上で輸送測定を行う。磁性元素のドーピング濃度、膜厚を制御し、強磁性秩序温度と量子異常ホール効果発現温度を最大化する。
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Research Products
(7 results)