2013 Fiscal Year Annual Research Report
音韻意識の発達に困難を示す聴覚障害幼児の実態と予防的介入方法の検討に関する研究
Project/Area Number |
13J07569
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
大鹿 綾 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 聴覚障害 / 幼児 / 音韻意識 / 指文字 / 書字 / 遅滞群 / 介入指導 |
Research Abstract |
対象児は、聾学校幼稚部在籍児28名(4歳児学級16名、5歳児学級12名)であった。絵を見せ、その絵の名前(清音2~5音節、撥音、長音、拗音、長音拗長音)を音声表出させた後、音韻分解課題、指文字表出課題、かな単語書字課題を行った。第1回から第2回調査における28名の結果を分析したところ、分解課題はおよそ5歳までに平均正答率が90%に達し、それに続いて指文字課題は5歳半頃に、書字課題は6歳頃に平均正答率90%となった。正答率100%の幼児が増える5歳3ヶ月以降でも分解課題で一度も正答率が100%とならなかったのは6名(a児、b児、c児、d児、e児、f児)であった。本研究では重複学級在籍児であるc児を除く5名を遅滞群として抽出する。a児は両親ろうであり、手話をコミュニケーション手段としている。手話で単語や物の特徴などについて説明できたものの、文字列として単語表出できるもの自体が少なかった。b児は音声も活用しており、日常観察では単語を知っている様に発音していたが、曖昧に記憶していた様で、実験中は自信のない様子だった。d児は音声活用しているが、分解課題、指文宇課題、書字課題の順に正答率が下がり、その差が大きかった。また、特殊音節の書字ルールを習得していない様子であった。e児は音声も活用しており、音声表出することができたが、音韻分解をさせると分解のタイミングがつかめなかったり、途中で混乱してしまう様子が見られた。また、1回目と2回目で正答率の変化がほとんどなかった。f児は、発音は明瞭ではない一方、聞き誤って覚えているものが多かった。指文字課題と書字課題で、1回目よりも2回目で正答率が下がっており、単語を曖昧に覚えておりまだ十分に定着していない様子も見られた。今後、聴力や獲得語彙数や認知発達等、より詳細なアセスメントを行い、困難の原因を明らかにしつつ、それに対応した介入方法を検討する為に個別指導を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りの人数の参加同意を得、研究を進めることができている。25年度は2回分の検査実施を行った。現在、結果を分析し遅滞群を抽出したところである。また、聴覚障害幼児の音韻意識及び書き能力の発達についても、誤答分析を行う中で構音運動などの関連する行動が観察されたことは今後の新たな視点としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、新たな研究参加者の参加同意を得つつ、継続の研究参加者への検査実施を行う。26年度は3~4回の実施を予定している。また、25年度に抽出した遅滞群に対しては個別介入を開始する。語彙や全体的認知発達などのアセスメントを行い、困難さの原因を仮定しそれに対する支援を行うことで、効果的な介入方法について検討していく。また、聴覚障害幼児の音韻意識及び書き能力の発達についても、回答の変化や誤答分析を行うことで検討していきたいと考える。
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Research Products
(8 results)