2013 Fiscal Year Annual Research Report
非リン酸化およびリン酸化タウタンパク質と微小管の結合自由エネルギー計算
Project/Area Number |
13J07605
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梅澤 公二 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員PD
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Keywords | 天然変性タンパク質 / タウタンパク質 / リン酸化 / 自由エネルギー計算 |
Research Abstract |
平成25年度の研究計画では、開発中のタンパク質の粗視化モデル(側鎖粗視化モデル)と効率的な構造サンプリング法を使用して441アミノ酸残基タウタンパク質の非リン酸化体とリン酸化体の室温平衡状態における立体構造集団を明らかにすることが目標であった。タウタンパク質はひとつの一定した立体構造をとることはない(天然変性)タンパク質であり、リン酸化をうけて微小管との結合親和性が減少する。また、リン酸化体はアルツハイマー病に関与していると考えられている。そこで、本年度ではリン酸化体と非リン酸化のタウタンパク質単体の立体構造集団を算出し、比較研究を行うことを目的とした。 本年度の前半、側鎖粗視化モデルについて最適なパラメータの探索を実施した。また、効率的な構造サンプリング法にはマルチカノニカル分子動力学計算法を用い、その開発とプログラムへの実装を行なった。はじめに、そのモデルと計算法を小さい天然変性タンパク質(KIDとスタスミン断片)に対して非リン酸化体とリン酸化体の立体構造集団の算出に用いた。リン酸化によって誘起される立体構造の特徴を得ることができ、本モデルと計算法が本研究目的を果たす手法として利用できることがわかった。そして、本手法を非リン酸化およびT231S262リン酸化タウタンパク質に対してそれぞれの立体構造集団の算出に応用した。現段階では十分に平衡状態の立体構造集団を網羅的に調べ尽くしてはいないが、得られた立体構造集団を解析したところ、リン酸化によって立体構造が膨張する結果が得られた。これらの結果は学会にてポスター発表および議論を行なうことができた。引き続き、十分な平衡状態の立体構造集団をサンプリングするため計算を実行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象であるタウタンパク質の構造サンプリングは当初の予想よりも困難であった。その理由には、全原子モデルに近い粗視化モデル、かつ、効率的な構造サンプリング法を用いても十分な室温平衡状態の構造集団を本年度内に求めるには必要な計算機能力が不足していたことが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題を完遂するには計算機能力の不足を解消する必要がある。そのために使用計算機の拡充とモデルの粗視化による計算コスト削減を進める。平成26年度以降は研究計画時よりも高い演算性能をもつ計算機を導入し、計算の遅れを取り戻す。また、粗視化による計算コスト削減は研究計画に含めていたが、前倒しして行なうことにする。具体的には、開発中の側鎖粗視化モデルについて全原子モデル部分(主鎖部分)を粗視化することで粒子数を削減し、分子動力学計算の時間刻みを大きくすることを可能にする。これらの対策を行なうことで、研究計画を達成することが可能になると期待している。
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Research Products
(3 results)