2013 Fiscal Year Annual Research Report
プラスチック光ファイバ中のブリルアン散乱特性の解明とそのセンシング応用
Project/Area Number |
13J07652
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 寧生 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非線形光学 / ブリルアン散乱 / プラスチック光ファイバ |
Research Abstract |
本研究では、1. プラスチック光ファイバ(POF)のブリルアン散乱特性の測定、2, POFを用いた分布測定システムの構築、3. POFを用いた分布測定システム高性能化を行うことを目的としている。平成25年度には、1について検討した。具体的には、①簡易実験系による誘導ブリルアン散乱(SBS)の観測、②ブリルアン信号増強のためのテーパー加工の前処理改善、を実施した。また、③POF中の欠陥を高速で検出する手法も提案した。 ①従来、POF中のSBSはロックイン検波を用いて観測されており、これでは、両端入射型の分布測定に直接適用は困難であった。前年、ロックイン検波を使用しないポンプ・プローブ法がPOFと同構造を有するシリカ屈折率傾斜型マルチモードファイバ中のSBSの観測に有効であることを示すことで、ロックイン検波なしでSBSを観測できない原因がPOFの構造ではなく、材料(伝搬損失等)にあることを明らかにした。そこで、今年度は、POFの長さを変えることで伝搬損失を制御し、ロックイン検波を使用しない簡易な実験系でPOF中のSBSの観測に成功した。また、SBS観測に最適なPOF長を明らかにした。 ②POFをテーパー加工する工程は、(i)クロロホルムを用いたPOFの補強層の除去工程と、(ii)テーパー工程に大別される。工程(i)において、従来手法では、蒸発したクロロホルムによりPOFに高い光損失が生じてしまい、補強層を除去したPOF中のブリルアン散乱の観測が困難であった。そこで、クロロホルムと水との境界面を活用してクロロホルムの蒸発を抑えて補強層を除去することで、明瞭なブリルアン散乱の観測に成功した。 ③従来のPOF中の欠陥を検出する手法の一つである光時間領域反射計は、高コスト、長い信号処理時間、一目では欠陥位置を確定できない、という問題点があった. そこで、入射光が欠陥付近で熱変換されることを利用し、放射温度計(IRT)を用いてPOF中の欠陥を高速で検出する手法を提案した。また、温度が損失に線形に依存することおよびその依存係数(損失推定の精度)は高パワーの光入射により増強できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった簡易実験系によるプラスチック光ファイバ(POF)中の誘導ブリルアン散乱の観測に成功した。また、テーパー加工によるブリルアン散乱増強手法の検討を行い、テーパー加工の前処理(POFの補強層除去手法)の改善にも成功した。さらに、ブリルアンの測定実験において欠陥のないPOFの選定が重要であるが、当初の目的にはなかった放射温度計を用いたPOF中の欠陥の高速検出手法の開発によりそれが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究成果を踏まえ、プラスチック光ファイバ(POF)を用いた分布測定システムの構築を行う予定である。具体的には、(1)数%の歪や数10℃の温度変化を印加した時の分布測定を実証、(2)メモリ効果が発現する数10%の歪を印加した時のメモリ効果の確認、(3)空間分解能や測定レンジ測定速度など、各種性能の向上、(4)シリカ単一モード光ファイバを用いた既存技術との本質的な違い(理論的な性能限界など)の解明を目指す。また、テーパー加工したPOF中のブリルアン散乱信号の観測も行う。
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Research Products
(41 results)