2014 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェン液体セルを用いた生体内反応のリアルタイムTEM観察
Project/Area Number |
13J07680
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐々木 祐生 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | グラフェン / 環境セル / 透過型電子顕微鏡 / 低次元材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定通り、2枚のグラフェンへの水の包摂操作の検討を行うとともに、実際に水を挟んだことで観察された特異な現象について解析、検証を行った。グラフェンへの包摂自体は昨年度開発したスプレー法で十分可能ではあったが、包摂する水の分子量のコントロールや大容量の水を挟むことができないなどの問題があった。そこで当該年度は、非常に質の良いグラフェン膜1枚を特殊な手法で折り曲げて、2枚のグラフェンとすることで内部に水溶液を多量に内包する手法を開発した。コントロール手法に関しては、1枚目のグラフェンにレジストを塗布しEBLによって描画、水素プラズマによってレジストの厚みを調整することで、水の容積を任意に調整できる手法を開発した。これらの新手法によって、自身の目的観察物質に合わせて水の包摂手法、分量を調整できるようになり、以前のスプレー法では困難だった数十nmの大きさを持つような分子などの包摂も可能となった。実際の包摂実験においても、厚さこそ不明であったもののグラフェン層間に数百nm四方程度のポケットを確認しており、昨年度発見したグラフェン内の水の相転移現象についても当ポケットにて再度観察に成功した。 昨年度発見したグラフェン層間内部の六方晶氷の発生メカニズムの解明に向けての研究を進めた。当初の予定通り、金属塩や純水を内包することで、相転移のしやすさや傾向の違いを調べたほか、相転移前後のEELSスペクトルの比較を行うことにより、凝固前後において酸素原子周りの電子状態が大きく変調していることを示唆する結果を得た。この他にも水とアルコールの混合溶液を包摂したものを作製し、TEM観察を行うことで、ミクロな空間においては水とアルコールが混合していないことを示す像を得ることに成功した。これらの結果は、ほとんど理論やスペクトル解析によってのみ進められてきた混合物の基礎物理学に対して、重要な知見をもたらすものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画した以上の進展を見せており、2年目に予定した内容に加え、溶液の基礎物理学に重要な知見をもたらす手法としてデモンストレーションに成功している。3年目に実行予定である溶液中の生体内分子などの直接観察自体は、新手法開発などにより現在ほぼ達成可能な状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在の手法で概ね研究遂行が可能であるとは考えているが、より汎用性を高めるとともに人的影響を少なくするため、新規手法の開発も並行して行っていく予定である。自身の実験を広め、より当該分野の発展を目指す際には、あらゆる操作や調整が自身の技術に頼っている現状を改善する必要がある。現在考案、検討を進めている、CVDグラフェンではなく、剥離グラフェンを利用する手法の確立を目指し研究を進める。また、水―アルコール混合系においては加熱、冷却ホルダーでのTEM観察を行うことで、水―アルコールの分離、混合の温度依存性について検討する。
|
Research Products
(2 results)