2013 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類における安定な一倍体ES細胞株の樹立とその利用
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13J07703
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
高橋 沙央里 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 1倍体ES細胞株 / 細胞周期 / Epiblast stem cell |
Research Abstract |
哺乳類のゲノムは父親と母親からそれぞれ染色体1組を受け継いだ2倍体で存在する。①常染色体劣性遺伝病などにおいて片親由来の染色体異常を補うこと、②片親性発現を示すインプリンティング遺伝子の存在から、哺乳類が2倍体で生存する生物学的意義は大きい。しかし、基礎研究において新規遺伝子機能の探索を行う場合、2倍体のヘテロ変異では表現型が見えないことが多い。そこで、本研究では長期間安定に培養できる1倍体ES細胞株を樹立することを目的とした。また、1倍体ES細胞だけでなく1倍体EpiSCの樹立も試みた。 1倍体ES細胞株は定期的にFACSを用いて1倍体細胞の選択・純化を行わなければ自然と2倍体化した細胞集団になってしまう。本研究では、この1倍体細胞の2倍体化は細胞周期が乱れ、G2期からM期(分裂期)への移行がスムーズにいかないために2倍体化が進行するという仮説を立てた。そこでG2期への促進を抑制するWeelが1倍体細胞では過剰に働いていると考え、Weel阻害剤を用いる培養条件の検討を行った。その結果、1倍体細胞を1ヶ月以上安定に培養できる条件を確立した。 また、本研究では、1倍体ES細胞株から1倍体EpiSCへの転換を試みる実験を行った。EpiSCはES細胞よりは分化が進んだprimed型の多能性幹細胞で、雌性1倍体EpiSC樹立の成功例は無い。本研究では添加薬剤などを検討することにより、1倍体ES細胞株から安定な1倍体EpiSCへの転換に成功した。 以上の(1)1倍体ES細胞株の安定培養条件の確立、(2)1倍体ES細胞からEpiSCへの転換条件の確立、といった2点の研究成果は、マウス1倍体細胞株を他の基礎研究へ応用することに貢献できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1倍体ES細胞株培養の大きな問題点として1倍体のまま長期間安定に培養できないことが挙げられる。本研究では、全くFACSを使わない培養方法は確立できなかったが、既存の培養方法よりも明らかに長期間培養できる培養条件を確立しており、1年目の目的はおおむね達成できていると思われる。また、1倍体EpiSCの培養にも成功しており、1倍体細胞の研究は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、1倍体ES細胞株の安定培養条件の確立と、1倍体EpiSCの培養方法の確立を行うことができた。1倍体FpiSCについては現在のところ特性解析などが進んでいない。今後は1倍体EpiSCの遺伝子発現やエピジェネティックな状態について詳細な解析を行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)