2013 Fiscal Year Annual Research Report
不適切な養育に至る親の認知行動プロセスの解明と予防的介入
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13J07750
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中谷 奈美子 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 不適切な養育 / 虐待予防 / 認知 / 感情 / 子育て支援 / 発達障害 / 親 |
Research Abstract |
平成25年度は、親の認知・感情要因および子の行動特性が不適切な養育に及ぼす影響を検討するために、1)一般の養育、2)発達に遅れや偏りが疑われる児の養育、の2群において質問紙調査を行った。 1. 調査対象 一般群は、公立保育園に通う2歳児・3歳児、私立幼稚園に通う3歳児、プレ教室に通う未就園児の親である(調査協力者296名)。もう一方(以下、療育群と記す)は、母子通園施設に通う発達障害の診断を受けた、あるいはその疑いのある2歳児・3歳児を育てる親である(調査協力者133名)。 2. 結果 質問紙では親子の日常的な関わりにおける子どもの困難行動・望ましい行動を5場面提示し、それらの場面で喚起される親の認知的評価および感情、さらに日常の不適切な養育、社会的要因(学歴、夫の協力、負担等)を測定した。データ分析の結果、一般群では不適切な養育の低い群に比べて高い群は、子どもの困難行動に対する嫌悪・怒り感情が強い一方、望ましい行動に対するポジティブ感情は弱く、「子どもがわざとした」「自分はうまく対応できない」など意図性・対処可能性は有意傾向であった。療育群では不適切な養育の低い群に比べて高い群は、困難行動だけでなく望ましい行動に対してもネガティブ感情が高く、「(子どもの困難行動は)この先何年も続く」という安定性認知が有意傾向であった。 3. 意義 不適切な養育に対する予防的支援が地域で実践される中、介入の根拠となる実証的知見は乏しい現状である。本研究は、親の認知感情リスクに関する仮説的理解を支援者に示し、根拠に基づいた具体的な支援を臨床現場に提供するものである。今後は、さらにデータ分析をすすめ、子どもの行動特性を考慮した親への認知介入について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙調査を一般群だけでなく、平成26年度に実施を計画していた療育群においても実施し、十分な調査協力者を確保することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、親に対する認知介入プログラムの構築に向けて、実施した調査結果について、認知と感情の双方向の影響過程を一般群・療育群において検証し、認知の持つ感情抑制機能を明らかにするとともに、子どもの行動特性(多動傾向や言語発達の遅れ)の影響に関してさらなる分析をすすめる。また、日常生活に近い感情を経験させることを目的としてVTR視聴方法を用いて、感情・認知的評価と不適切な養育の関係を明らかにしていく。
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Research Products
(1 results)