2014 Fiscal Year Annual Research Report
不適切な養育に至る親の認知行動プロセスの解明と予防的介入
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13J07750
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中谷 奈美子 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 不適切な養育 / 帰属 / 認知 / 感情 / 虐待予防 / 発達障害 / 親 / 子育て支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、親の認知・感情要因および子どもの行動特性が不適切な養育に及ぼす影響を検討するために実施した2つの研究結果の解析をすすめ、学会発表等で研究成果を発信した。また、不適切な養育に至る親の内的過程について、研究で得られた知見を子育て支援の現場にフィードバックした。研究結果の概要は以下の通りである。 1.一般家庭の親における不適切な養育発生プロセス 本研究で注目した帰属次元のなかで、安定性と対処可能性が親の怒り・嫌悪感情に影響し、これらの感情は子どもに対する不適切な養育に影響を及ぼすことが明らかにされた。また、子どもに対する被害的認知は他の帰属次元とは異なり、不適切な養育に直接関わる可能性が示された。 2.発達障害児、あるいはその疑いのある児を育てる親における不適切な養育発生プロセス パス解析の結果,困難場面における親の対処可能性が低いほど、親の怒り・嫌悪感情が強まることが示された。また、怒り・嫌悪が強いほど、不適切な養育が高まることが示された。さらに、子どもの行動特性が親の感情・不適切な養育に及ぼす影響については、多動・不注意から不適切な養育に正の影響が示され、言語発達の遅れから怒り・嫌悪に負の影響が示された。言葉の遅れがない一方で困難行動が生じる高機能児養育では、育児ストレスや疲労・負担の大きさから、怒りや嫌悪などの不快感情が生じやすいと考えられた。 以上の結果は、先行研究における対人認知や帰属研究に関する示唆(Crick & Dodge, 1994 ; Weiner, 1985, 1986)と一貫しており、従来の認知に関する理論的枠組みを子育て臨床へ応用する可能性を高めた。また、発達障害児養育において示されたプロセスは、単に親のリスク要因のみ、あるいは子の要因のみでもない、親子の相互作用的な視点で不適切な養育発生を理解することの重要性を示唆する意義深い知見といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般家庭の親だけでなく、母子通園施設10か所に通う発達障害児、あるいはその疑いのある児を育てる親においても計画通り調査研究を実施し、十分なデータ解析を行った。また、研究成果を現場にフィードバックするとともに、成果の発信に向けて研究論文を投稿した。これらのことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、親に対する認知介入プログラムを構築し、効果介入の検証を行う予定であった。しかし、プログラム作成のためには、認知や感情の影響をより多面的に解明し、不適切な養育が発生する仕組みを詳細に記述することが必要であると考えられた。そのため、発生プロセスに関する基礎研究を継続し、認知の歪みや偏りを媒介とした不適切な養育発生モデルをより明確にしていく。具体的には、これまでの研究対象(2歳児・3歳児)で明らかにされたモデルが年長児にも適用できるのか、1歳、3歳、5歳児養育における認知行動プロセスの共通点および年齢ごとの特異点について、研究対象を拡大して検討を行う。さらに、育児に困難を示す親を含めた乳幼児を育てる母親に対する面接調査を実施し、これまでに示された認知リスクの妥当性について検証する。
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Research Products
(2 results)