2013 Fiscal Year Annual Research Report
胎生期から成人にわたる医療薬学的視点からの生活習慣病予防に対するアプローチ
Project/Area Number |
13J07756
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
保坂 実樹 東北大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 家庭血圧 / 薬効評価 / 降圧薬 / 高血圧 |
Research Abstract |
本研究では、家庭血圧をツールとして、成人の降圧薬の薬効評価および妊婦・授乳婦の薬剤使用が小児の家庭血圧および成長に及ぼす影響を検討することを目的としている。今年度は、成人における降圧薬の薬効評価を、J-HOME研究の対象者を用いて行った。これは、2010年から実施されている多施設共同・オープン・前向き無作為比較試験であり、現在も1.5年および3年の追跡観察を行っている。 アンジオテンシン受容体拮抗薬の一種であるカンデサルタン8mgでの治療で朝の家庭収縮期血圧が135mmHg未満に降圧しなかった本態性高血圧患者を対象とし、カンデサルタン12mgへの増量(増量群)と、カンデサルタン8mg+ヒドロクロロチアジド6.25mg(合剤群)との併用(合剤の服用)とではどちらがより降圧効果に優れているか、また最大降圧度までの期間はどうかを検討した。8週間の降圧効果を比較したところ、増量群の降圧度は収縮期/拡張期血圧=7.8/3.6mmHg、合剤群の降圧度は収縮期/拡張期/11.2/5,3mmHgであり、合剤群は増量群に比して有意に降圧度が大であった(収縮期/拡張期P=0.01/0.04)。8週間の治療後の降圧目標(家庭収縮期血圧<135mmHg)達成率は、増量群で30.1%、合剤群で52.4%であり、合剤群で有意に高率であった。さらに、最大降圧までに達する時間は、合剤群で38日、増量群で280日であった。以上より、カンデサルタン8mgで家庭血圧がコントロールできない本態性高血圧患者においては、カンデサルタンの増量よりも、ごく少量のヒドロクロロチアジドの追加の方が家庭血圧の降圧度が大きく、より早い最大降圧が得られるということが明らかとなった。本研究結果は、高血圧患者のより適正な降圧治療において重要な結果であり、現在本結果についての論文を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究目的は、家庭血圧をツールとして、成人における降圧薬の効果の評価と降圧薬がもたらす代謝系への影響、および小児における家庭血圧に妊婦・授乳婦の薬剤使用が及ぼす影響を明らかにし、医療薬学的視点から脳心血管疾患予防に対するエビデンスを構築することである。本年度は成人における服用降圧薬の違いが家庭血圧に及ぼす影響の検討を行い、おおむね研究目的にそって研究を進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の1年目の達成度としてはおおむね順調に進展させることができた。成人においては、2年目以降も、申請書中の年次計画に沿って、また、1年目の計画で実施できなかった点を中心として計画を推進していく。具体的には、代謝系と服用降圧薬に関して、降圧薬の選択に必要なエビデンス構築をめざす。 一方で小児においては、TSCD12歳調査の実施が少々難航している。本年度以降も12歳もしくはそれ以降の調査実施を計画しながら、周産期情報と7歳調査の情報を中心として研究を進めていく。2年目以降は、カルテおよびアンケートから薬剤使用状況等の把握を行っていく予定である。
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Research Products
(14 results)