2014 Fiscal Year Annual Research Report
各種動物におけるアミロイドA(AA)蛋白質の比較構造解析と線維化分子機構の解明
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13J07770
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鄭 明奈 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | AAアミロイド / ネコ / 遺伝子多型 / アミロイド構成分子種 / 国際情報交換 / カナダ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アミロイド蛋白を病理学的、生化学的に分析することによりアミロイド線維形成の分子機構を明らかにすることを目的としている。そこで、我が国における発生の多い日本猫 (JDC)のAAアミロイド症について免疫組織化学的にAA構成分子種の検索を行った。また、その前駆蛋白である血清アミロイドA (SAA)のネコにおける遺伝子多型を検索した。 AAはSAAの切断型分子種により構成されると考えられているが、その切断部位は動物種により様々で、ヒトではN末端から76番目までのアミノ酸残基がアミロイド化することがわかっている。そこでネコAAの構成分子種を検索するため、SAAのN末端側、中心領域、C末端側に対するポリクローナル抗体をそれぞれ作製し、免疫染色および抗AA抗体との免疫蛍光二重染色を行った。 その結果、SAA中心領域、C末端についてAAとの共局在が認められたが、N末端はAAと共局在しなかった。以上のことから、ネコAAはヒトと異なり、C末端側を含むSAA分子種で構成されており、SAAのN末端側がアミロイド化に必須でないことが示唆された。 ヒトではSAA遺伝子多型がAAアミロイド症の病因の一つであることが知られている。ネコでも、アビシニアンとシャムで家族性にAAアミロイド症が発生することがわかっている。そこで、AAアミロイド症の発生が多いJDCについてSAA遺伝子多型を検索した。アミロイド症ネコと未発症ネコのSAA遺伝子の比較から、アミロイド症発症に関与すると考えられる多型部位を同定した。また、アビシニアンとシャムの先行研究で報告されていた遺伝子多型とAAアミロイド沈着臓器との相関関係はJDCでは認められなかった。今回の結果からネコSAA遺伝子多型部位が明らかとなった。 以上の結果について、当該分野を専門とするGuelph大学オンタリオ獣医校教授が来日した際にセミナー形式で情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、ネコAAアミロイドを構成する前駆蛋白SAAの切断部位が免疫染色により明らかとなった。当初の目的はAAアミロイド線維形成の分子機構を明らかにすることであり、切断型SAAの同定はその一助となると考えられる。ネコAAを構成するSAA分子種とヒト、マウスのAA構成SAA分子種を比較することで、アミロイド線維化を規定する因子が推定できると考えている。 当初は、精製AAについてウエスタンブロットと質量分析法を組み合わせて、その構成SAA分子種を直接的に同定する予定であったが、昨年度は免疫染色により間接的な同定を行った。 なお、アミロイド原性を有するSAA分子種を同定したのち、その分子種の立体構造を決定する予定であったが、これについては今年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
同定された切断型ネコSAA分子種のリコンビナント蛋白および全長ネコSAAリコンビナント蛋白を作製し、それぞれについてチオフラビンTアッセイによる線維形成試験を行う。また、両方のリコンビナント蛋白を、アミロイドーシス抵抗性のCE/J系統マウスに投与し、in vivoでの線維形成能を比較検証する。 ネコSAA遺伝子については引き続き症例数を増やして解析し、アミロイド症発症と有意に関連する変異を検索する。
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