2013 Fiscal Year Annual Research Report
アドレノメデュリン-RAMP2システムの病的血管新生における意義の解明
Project/Area Number |
13J07817
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 愛 信州大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アドレノメデュリン / 腫瘍血管新生 / 血管恒常性 |
Research Abstract |
内因性生理活性ペプチドであるアドレノメデュリンと、その受容体活性調節タンパクであるRAMP2の病態生理学的意義を明らかとするため、成体になってから遺伝子欠損誘導が可能な、誘導型の血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)を樹立した。 DI-E-RAMP2-/-を用いて、腫瘍移植による腫瘍血管新生を検討した結果、DI-E-RAMP2-/-では腫瘍血管新生が抑制され、腫瘍増殖が抑制されていた。一方で、原発巣摘出後、腫瘍の遠隔臓器への転移を検討したところ、DI-E-RAMP2-/-では転移が亢進するという結果が得られた。 そこで、遠隔臓器における転移前の環境、すなわち転移前土壌に着目した検討を進めた。転移予定先である肺においては、RAMP2遺伝子欠損誘導後、VE-カドヘリンなどの血管内皮細胞間の接着因子の発現低下と、内皮細胞の変形や逸脱などの血管の構造異常が観察された。DI-E-RAMP2-/-の血管内皮細胞を分離しアクチン染色したところ、細胞骨格の形成不全が認められ、アクチンの重合に重要な役割を果たす低分子量Gタンパク、Rac1の活性低下が確認された。さらにDI-E-RAMP2-/-の肺に生じる変化を時系列で観察したところ、RAMP2欠損後早期から、肺内へのマクロファージの集積を認め、TNF-α、IL-6などの炎症系サイトカインの発現充進が認められた。肺における炎症は慢性的に継続し、RAMP2欠損誘導後の後期においては、腫瘍細胞を転移巣へと誘導するとされるS10OA8/A9の発現充進も確認された。 以上の結果から、血管内皮細胞のRAMP2欠損により、①血管構造の不安定化、透過性亢進が生じ、これによって炎症細胞の接着や浸潤が起こること、②血管における慢性炎症が、腫瘍細胞の「転移前土壌」となり、腫瘍の遠隔臓器への転移を促進させることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
誘導型の血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)の樹立に成功し、マウスが成体になってからRAMP2遺伝子の欠損誘導を行うことが可能となった。これにより、従来はノックアウトマウスが胎生致死であるため、成体での解析が困難であった点を克服し、AM-RAMP2系の成体での病態生理学的意義を検討することが可能となった。現在、Dl-E-RAMP24一を用いて、腫瘍の増殖、転移におけるAM-RAMP2系の意義の検討を進めている。これまでの検討から、DI-E-RAMP24-/-では、B16F10メラノーマの皮下移植において、血管新生は減弱し、腫瘍増殖が抑制されていた。その一方で、B16BL6メラノーマ細胞を用いて、原発巣摘出後の遠隔臓器への転移の検討を行ったところ、DLE-RAMP2-/-では肺への転移が亢進するという結果が得られている。AM-RAMP2系は腫瘍転移には抑制的に働いている可能性があり、今後、原発巣摘出後の術後アジュバント治療への応用などが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
内因性のAM-RAMP2系が血管の恒常性維持に働き、腫瘍転移に抑制的に働いていることが示された。今後の課題として、AM-RAMP2系による腫瘍転移抑制メカニズムの詳細を明らかとし、更に、AM-RAMP2系を活性化することで腫瘍の転移を抑制できるのか検討を進める予定である。現在、RAMP2を過剰発現させた血管内皮細胞や、血管内皮細胞特異的RAMP2過剰発現マウスの樹立を進めており、次年度以降、これらの研究マテリアルを応用した検討を進める計画である。
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Research Products
(11 results)