2013 Fiscal Year Annual Research Report
ハロアセチレンへの新規求核付加反応の開発とヘテロ環化合物および薬剤合成への応用
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13J07902
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山岸 優仁 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ハロアセチレン / 求核付加反応 / 官能性cis-ハロオレフィン / テトラゾール / ハロエナミン / 官能性ピペリジン / アルカロイド / イソソレノプシン |
Research Abstract |
本研究では、ハロアセチレンへの求核付加反応について、基質適用性等の詳細ならびにその応用利用を検討し、新規合成手法として確立することを目的としている。平成25年度は研究計画に従って以下の3項目について検討を行い、下記の成果を得た。 1. ハロアセチレンに効率良く付加する求核剤の探索 炭素求核剤およびリン求核剤の付加を検討したところ、現在まで目的の付加物を得るには至っていない。しかし、窒素求核剤として従来のスルホンアミド等よりも酸性度が大きいテトラゾールも利用できることを見出し、薬剤骨格に頻出するヘテロ環を有する官能性cis-ハロオレフィンの新規合成法を開発した。 2. ハロアセチレンへの求核付加-カルベン中間体を経る新反応の開発 N-フェニルエチル-6-ハロ-5-ヘキシニルアミン・トリフルオロ酢酸塩を炭酸カリウムと安息香酸の共存下DMA中で加熱した際に、想定したカルベン捕捉によるインドリジン誘導体は得られず、代わりにN-フェニルエチル-6-[(ベンゾイル)オキシメチル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリジンが単離できた。この結果から、ハロアセチレンにアミンが求核付加した後にはカルベン中間体の発生ではなく、ハロエナミン部位の異性化を経てハロゲン基が置換されると結論付けた。更に、上記反応を利用して官能性ピペリジンの合成法を開発した。 3. ハロアセチレンへの求核付加を利用する薬剤分子合成 予定していた抗炎症薬ゾメピラックの合成は実現していない。しかし、2.で記した官能性ピペリジンの合成法を利用して、抗HIV活性を有するイソソレノプシンのラセミ体合成を達成した。 なお、上記の2.および3.の成果は第104回有機合成シンポジウムにおいて発表した。以上平成25年度の研究展開により、ハロアセチレンに求核付加する新たな求核試薬を見出すとともに、アルカロイド合成の中間体として有用な官能性ピペリジンの新規合成法を開発し、本反応の汎用性をさらに高めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究として申請した「炭素およびリン求核剤の付加」に関しては、現在のところ付加物を得るには至っていない。しかしながら、窒素求核剤としてのテトラゾールを付加できることを見出した。また、ハロアセチレンへのアミンによる分子内求核付加を利用して官能性ピペリジンの新規合成法を開発した。さらにこれを利用して、抗HIV活性を有するイソソレノプシンの簡便合成法を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究によって、ハロアセチレンにアミンが求核付加した後にカルベン中間体の発生ではなく、ハロエナミン部位の異性化を経てハロゲン基の置換が進行することが示唆された。そこで当初予定していた「ハロアセチレンへの求核付加-カルベン発生反応の開発」に代わり、「ハロアセチレンへの求核付加-異性化を経る有機合成手法の開発」を新規テーマとして設定した。平成26年度は、まずこれについて基質適用性との詳細について検討を行い、新規のヘテロ環化合物合成開発を目指す。また、「ハロアセチレンへの求核付加を利用する薬剤合成」についても検討を行い、これまでに見出してきたハロアセチレンへの求核付加によるヘテロ環化合物合成法を利用し、人工の薬剤分子もしくはは天然の生物活性分子の合成を行う。
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Research Products
(1 results)