2013 Fiscal Year Annual Research Report
グアニン四重鎖リガンドのがん幹細胞に対する作用機序解明と抗がん剤への展開
Project/Area Number |
13J07907
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中村 貴大 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | グアニン四重鎖 / テロメスタチン / がん / がん幹細胞 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
グアニン豊富な配列を有する核酸は、グアニン四重鎖(G4)と呼ばれる特殊な立体構造を形成する。G4を形成する配列はゲノムワイドに存在すると考えられており、G4を安定化する化合物(G4リガンド)によりそれらの機能が検証されてきた。テロメアやがん関連遺伝子プロモーター領域でのG4安定化は制がん効果を示すことから、G4はがん治療の新たな分子標的となりうる。我々はこれまでに、天然由来G4リガンドであるテロメスタチン(TMS)が神経膠腫幹細胞(glioma stem cell : GSC)の増殖を選択的に抑制することを示してきたが、TMSは化学合成、細胞培養法になどよる大量供給が極めて難しい。 そこで、大量合成が可能で高活性な新規TMS誘導体の創製を目指し、我々は6OTDを合成し、その制がん効果を調べた。6OTDはヒトがん細胞パネルの中でも特に神経膠腫U251の増殖を強力に抑制し、同細胞移植マウスモデルにおいても抗腫瘍効果を示した。また、非血清培養条件のGSCモデルでの評価により、6OTDはTMSよりもIC_<50>値の比較で10倍程度強力なGSCの増殖抑制効果を示した。さらに、6OTDはGSCに対してDNA損傷を与え、細胞周期のG1期停止およびアポトーシスを誘導したが、これらの効果は分化した非幹神経膠腫細胞では認められなかった。以上の結果から、6OTDは神経膠腫幹細胞選択的な制がん効果を示す可能性が強く示唆された。これらは、G4ががん治療における新規分子標的であることを支持するものであり、新規抗がん剤の開発研究およびがんにおけるG4の機能解明につながる成果であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経膠腫幹細胞に対するin vitroおよびin vivoでの評価に耐えうるスケールでのテロメスタチン誘導体の大量合成を行い、それらを用いて6OTDが有する神経膠腫幹細胞に対する制がん効果を調べることができたため。具体的には、6OTDが神経膠腫細胞株U251移植モデルマウスにおいて抗腫瘍効果を有することや、神経膠腫幹細胞選択的に細胞増殖抑制効果を発揮し、DNA損傷やアポトーシスへと誘導することを明らかとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
6OTDが神経膠腫幹細胞選択的に細胞周期のG1期停止やアポトーシスを誘導することが明らかとなったので、今後はDNA損傷経路やアポトーシスに関連するタンパク質のウエスタンブロッティングを行うこと、6OTDが有する神経膠腫幹細胞選択的な抗腫瘍効果を脳内同所移植系で検証することを予定している。
|
Research Products
(3 results)