2014 Fiscal Year Annual Research Report
グアニン四重鎖リガンドのがん幹細胞に対する作用機序解明と抗がん剤への展開
Project/Area Number |
13J07907
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中村 貴大 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グアニン四重鎖 / がん / がん幹細胞 / 神経膠腫 / テロメスタチン / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
テロメアDNAなどのグアニンに富む配列は、グアニン四重鎖(G4)と呼ばれる特殊な立体構造を形成する。G4を安定化する化合物(G4リガンド)は制がん効果を示すことから、G4はがん治療の新たな分子標的となりうる。我々は昨年の本学術集会において、天然由来G4リガンドであるテロメスタチン(TMS)の誘導体6OTDが、TMSよりも強力に神経膠腫幹細胞(glioma stem cell: GSC)の増殖を抑制することを報告した。今回は、GSCに対する6OTDの作用機序をさらに詳細に解析した。まずFRET融解アッセイにより、6OTDがTMSと同様にG4を選択的に安定化することを確認した。GSCは分化した非神経膠腫幹細胞(non-stem glioma cells: NSGC)と比べ、IC50値の比較で約10倍高い6OTD感受性を示した。これと一致し、6OTD処理したGSCでは、核内DNA損傷フォーカスの形成・細胞周期sub-G1期の上昇およびS期・G2/M期の低下・アポトーシスの指標となるPARPの開裂が観察された。NSGCでは同濃度の6OTDを処理してもこれらの変化は認められなかった。重要なことに、6OTDによるDNA損傷は、アルキル化剤であるテモゾロミドによるDNA損傷と比べテロメアと共局在する頻度が有意に高く、6OTDがテロメアG4を認識していることが示された。一方、非テロメア領域でもDNA損傷が検出された。以上より、6OTDはテロメアをはじめ、ゲノムワイドにG4を安定化し、GSCの増殖を抑制すると考えられた。これらは、G4ががん治療における新規分子標的であることを支持するものであり、新規抗がん剤の開発研究およびがんにおけるG4の機能解明につながる成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経膠腫幹細胞に対するin vitroおよびin vivoでの評価に耐えうるスケールで合成したテロメスタチン誘導体 (6OTD) を用いて、それが有する神経膠腫幹細胞 (GSC) に対する制がん効果のメカニズムをより詳細に解析できたため。具体的には、6OTD処理したGSCでは、核内DNA損傷フォーカスの形成・細胞周期sub-G1期の上昇およびS期・G2/M期の低下・アポトーシスの指標となるPARPの開裂が観察されたが、非幹細胞では同濃度の6OTDを処理してもこれらの変化は認められなかった。また、6OTDによるDNA損傷は、アルキル化剤であるテモゾロミドによるDNA損傷と比べテロメアと共局在する頻度が有意に高く、6OTDがテロメアG4を認識していることが示されたことに加え、非テロメア領域でもDNA損傷が検出された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ChIP-seqを用いて6OTDが誘導するDNA損傷箇所の配列を同定することと、GSC脳内同所移植系モデルマウスでの6OTDの抗腫瘍効果の検証を行う。
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Research Products
(6 results)