2013 Fiscal Year Annual Research Report
国際/グローバル秩序の動態-「保護する責任」と主権をめぐる言説/実践の分析から
Project/Area Number |
13J07911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高澤 洋志 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際秩序 / 主権 / 保護する責任(R2P) / 国連 / 人道的介入 / 紛争予防 |
Research Abstract |
本研究の目的は、主権概念および「保護する責任(R2P)」概念をめぐる言説/実践の分析を通して、国際秩序の変動とその変動に付随して現れつつある「グローバル秩序」の様相を解明することである。平成25年度は、冷戦終結から現在までの言説/実践の展開を歴史的手法に基づいて研究・調査した。主に国連文書などの一次資料や、R2P関連の二次資料の研究・調査を行い、さらにR2P概念の理論的発展に関わった専門家・研究者や、同概念の実践に携わる関係者にインタビュー調査を行った。 上記の研究・調査の意義・重要性として、既存の研究で看過されてきた、R2Pをめぐる言説/実践の「第三の潮流」の存在を明らかにできたという点があげられる。R2P概念はいかなる目的を中心とすべきか、そのためにいかなる実施方法が適切かなど、同概念の内実に関して激しい議論が続けられているが、これまでの研究では、基本的にR2Pの二つの潮流―「予防」重視の潮流と「対応」重視の潮流―を軸に議論がまとめられてきたと言える。しかし、上記の研究・調査から、主に2009年以降、国連において「第三の潮流」が主流化してきたことが明らかとなった。この「第三の潮流」の主流化については、平成26年刊行の『国連研究』第15号に掲載される論文でまとめている。 既存の「二つの潮流」に「第三の潮流」を加えた「三っの潮流」という視座は、R2Pをめぐる言説/実践の2009年以降の展開を整理する際に適切なだけでなく、2009年以前の展開を改めて再検討する上でも有益かつ重要な視座である。「三つの潮流」という視座に依拠することで、冷戦終結から現在に至る、主権およびR2Pをめぐる言説/実践の展開をより精緻に分析することが可能となる。そして、最終的には、国際秩序の変動に対するより深い洞察を得ること、冷戦終結後の国際/グローバル秩序の動態を明らかすることができるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究目的および研究計画に沿って、おおむね順調に研究が進んでいるが、当初の計画よりも論文執筆や学会発表のタイミングが遅れているため。(論文は、平成25年度に1本執筆し、平成26年6月公刊の『国連研究』第15号に掲載予定。学会報告は、平成25年度に2件採択され、平成26年5月に応用哲学会、10月に日本政治学会にて報告を行う予定。)
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に行った研究に基づき、論文を1ないし2本執筆(査読付の雑誌に投稿)する。また、既に採択されている学会報告の他、平成26年度中に学会報告に応募し、平成26年度あるいは27年度に学会報告を行う。 当初の研究計画では、平成25年度はニューヨークおよびカリフォルニアでインタビューを行う予定であったが、交付申請書に記載したサンディエゴ大学(カリフォルニア)のE・ラック教授(元R2P担当国連事務総長特別顧問)とのインタビューを、テレビ電話(インターネット利用)にて行うこととなった(平成25年10月に実施)。そのため、海外調査の行先をオーストラリアに変更し、キャンベラおよびブリスベンにて、オーストラリア国立大学のR・タクール教授やオーストラリア外務省の関係者にインタビューを行った。 研究遂行上の問題点は、特にない。
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Research Products
(1 results)