2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J07921
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鶴巻 晃子 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フッ素ポリマー / イオン液体 / 溶解 |
Research Abstract |
イオン液体へのフッ素ポリマーの溶解を支配する因子を整理した上で、戦略的にフッ素ポリマーの溶媒としてのイオン液体を設計することを目標とした。始めに、アニオンとしてビス(トリフルオロメタンスルポニル)イミド([Tf_2N])を用いて作製した一連のイオン液体と、カチオンとして1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムを用いて作製した一連のイオン液体へのポリフッ化ビニリデン(PVdF)の溶解性を評価した。イオン液体の構造がPVdFの溶解性に与える影響を解析した結果、PVdFの溶解性はイオン液体のカチオン種に大きく影響を受けることを明らかにした。PVdFは表面双極子を有すると考えられ、双極子-イオン間相互作用を介してイオン液体に溶解したものと考えられる。そこで、PVdFの溶解試験に用いたイオン液体の極性を評価するために、Kamlet-Taftパラメータを決定した(α値 : 水素結合供与能、β値 : 水素結合受容能)。Kamlet-Taftパラメータのα値が0.4以上のイオン液体がPVdFを溶解したことから、イオン液体の水素結合供与能がPVdFの溶解を左右することを見出した。また、[Tf_2N]アニオンと比較して、フッ素含有率の高いビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド([Pf_2N])アニオンを用いて同様の検討を行ったところ、[Pf_2N]塩は[Tf_2N]塩よりも良好なPVdFの溶解性を示した。これは、[Pf_2N]アニオンが[Tf_2N]アニオンと比較してフッ素含有率が高く、フッ素ポリマーとの親和性が高くなったためと考えられる。以上のように、PVdFの溶解に寄与する因子としてイオン液体の極性とフッ素含有率に着目した検討を行った。得られた知見は、フッ素ポリマーの溶媒としてイオン液体を設計する上で重要な知見である。 また、フッ素ポリマーとイオン液体のコンポジットを作製し、成分間の親和性がコンポジットの形状に影響を与えることを明らかにした。成分間の親和性はコンポジットのイオン伝導度などの物性にも影響を与えると考えられ、上述した知見はコンポジットの機能設計にも重要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はフッ素ポリマーの溶媒としてのイオン液体の設計と、フッ素ポリマーとイオン液体のコンポジットの設計である。これまでに、フッ素ポリマーとイオン液体の親和性に関する知見を整理したほか、成分間の親和性がコンポジットの形状に影響を与えることも明らかにした。用いたフッ素ポリマーの種類が十分ではないが、基礎的な知見の集積は完了していることから、研究計画は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た知見を基に、イオン液体の物性の改善を図る。また、ターゲットとするフッ素ポリマーのフッ素含有量に着目し、フッ素含有量がイオン液体との親和性に与える影響について精査する。また、高分子の溶解には高分子の分子量が大きく影響を与えることから、フッ素ポリマーの分子量とイオン液体への溶解性の相関についても検討する。パーフルオロ系の高分子で分子量が小さいものを研究室で扱うことは困難であるが、パーフルオロ系のオイルなどを代替材料として用いることで、分子量とイオン液体との親和性に関する知見が得られると考えている。
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Research Products
(8 results)