2013 Fiscal Year Annual Research Report
大学生の学習への深いアプローチを促す授業づくりのための実証的研究
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13J07952
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斎藤 有吾 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 深い学習 / アクティブラーニング / PBL / ルーブリック / 評価者間信頼性 / 大学生 |
Research Abstract |
本研究は、今日の大学教育で求められているような学生の深い学習を促すためには、授業実践場面においてどのような介入が考えられるのか。また、深い学習を促した結果、それが学習成果にどのような影響をあたえるのか、を実証的に明らかにし、大学教育に寄与することを最終的な目的としている。昨年度はそのための予備的調査の段階であり、多岐にわたる学習成果をどのように捉えることが尤もらしいのか、といった問を探求した。 昨今、アクティブラーニングなどの深い学習を促すための実践において、統合的な学習成果を信頼性・妥当性が担保されている形で測定するために、ルーブリックを用いて評価する必要性が指摘されている。しかし、ルーブリックを使えばただそれだけで信頼性の担保が保証されるわけではない。ルーブリックを用いてどのように信頼性が検討されるのか、また信頼性を高めるためにどのような方策が考えられるのか、このような問題意識のもと新潟大学歯学部のアクティブラーニングの実践に焦点を当てた論文を共著で執筆した。特に、評価の信頼性が担保されているかどうかを検討する部分を担当した。複数の教員がルーブリックを用いて評価した結果の信頼性を統計的な手法で検討し、その結果から、より高い信頼性を担保するための方策を示唆した。 また、大学教育における学習成果は、教員による直接評価によって測定することが望ましいとされているが、しかし、そのような手法で測定することに親和性が高い学習成果とそうでないものがあると考えらえる。たとえば、大学教育で育成するべきとされている学士力の「生涯学習力」「自己管理力」などは、学生個人の心理的側面に多分に関わるものであると考えられ、ある課題への学生のパフォーマンス(アウトプット)から解釈することは難しいと考えられる。よって、このような学習成果を捉えるためには、それぞれの概念を測定するための自記式アンケートによる尺度を使用することが適切だといえる。このような問題意識から、そのための自記式アンケートによる尺度を作成した。この尺度に関する信頼性・妥当性の検討や、大学での学習関係の他の変数との関連についての量的調査の結果を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
専門分野である高等教育研究のプロジェクトに関して、調査・評価に関わるデータの解析を担当するなど、実践的に研究のフィールドを精力的に広げることができた。加えて、直接評価と間接評価の統合を目指すといった、本研究の内容に大きくかかわる大学教育学会の課題研究に参加し、そのプロジェクトの一環である論文を共著で執筆した。さらに、Web調査などによりデータを集積しており、近いうちにその成果と、プロジェクトの引き続きの成果を論文の形で学会誌等に発表していく予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、今日の大学教育で求められているような学生の深い学習を促すためには、授業実践場面においてどのような介入が考えられるのか。また、深い学習を促した結果、それが学習成果にどのような影響をあたえるのか、を実証的に明らかにし、大学教育に寄与することを最終的な目的としている。 1. 実証的な先行研究における、大学教育における学習成果の測定方法と、学習成果とその他の変数との関連のレビュー 2. 専門領域によらない高次で統合的な能力に関する学習成果(問題解決力、論理的思考力、数量的スキルなど)を縦断的に測定するための課題と測定方法の開発を行い、来年度に予定している縦断的調査に備えるものとする。
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Research Products
(2 results)