2013 Fiscal Year Annual Research Report
アルゼンチンにおける日系人の文芸活動とコミュニティ形成の文化史的考察
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13J07953
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高木 佳奈 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日系移民史 / 文化研究 / アルゼンチン |
Research Abstract |
本研究の目的は、アルゼンチンにおける日系人の文芸活動の実態を明らかにし、コミュニティが形成される過程でこれらの文芸活動が果たした機能を文化史的観点から考察することである。 一年目の本年度は、修士論文でも扱ったアンナ・カズミ=スタールという二世作家と、酒井和也という二世の画家、翻訳家に焦点を当て、調査を行った。前者は米国出身の日系二世でありながらアルゼンチンに移住しスペイン語で小説を執筆しており、移民と言語という観点から文学を考える上で興味深い。後者は戦前の日本で教育を受け、アルゼンチン、メキシコ、米国で画家、日本文学翻訳者として活躍した人物で、海外での日本文化普及において重要な役割を担った。 二ヶ月にわたる現地調査では、上記のテーマに関するインタビュー調査や資料収集を行った。特に酒井和也に関しては、ブエノスアイレスで個展が開催され、講義録の出版記念会も行われたので、関係者から様々な話を聞くことが出来た。また研究協力者として参加している「南米日系移民および韓国系移民による文学に関する総合的研究」(研究課題番号 : 23520248)の研究者らに同行し、パラグアイ、チリの日系及び韓国系のコミュニティを調査した。各国の日系社会はホスト社会の影響を受けて独自の文化を形成しており、特に日本語や日本的な生活様式が維持されている隣国パラグアイの移住地との比較はアルゼンチンの特殊性を明らかにした。 これらの研究成果はアルゼンチンで行われた国際学会及び国内の研究会で報告し、国内外の研究者と意見交換を行った。またボルヘス夫人で日系二世のマリア・コダマ氏へのインタビューが文芸雑誌『すばる』に掲載され、ボルヘスと日本との関係や彼女自身の二世としての経験を明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査で得た資料を分析し、学会での口頭発表や論文投稿を行い、定期的に成果を報告することが出来たと考えている。資料収集に関しては、邦字新聞等貴重な資料に一枚一枚丁寧に目を通す必要があるため時間がかかっているが、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度から酒井和也に関する調査を進めているが、アルゼンチンで資料収集を行った結果、メキシコ及び米国でしか手に入らない資料が多くあることがわかり、今後はフィールドを広げて調査を行う必要性があると考えている。また当初は翻訳家としての活動に注目していたが、画家としての側面も無視できないと感じ、美術史研究も視野に入れて調査を行う予定である。
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Research Products
(5 results)